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Page14:プンプンだよ

「…あっ、スマホ…!」 それからハッと思い出しても後の祭りで、あんなことをされた今、部屋に行く勇気なんて俺にはなかった。 「あ…、ソウにも聞かれたんだっけ…。」 お菓子で気を取られていたが、徐々に自分の置かれている立場のヤバさを自覚する。 部屋行きたくないとか思ってる場合じゃないため、スマホを取り返すために重い足取りで部屋に向かった。 「シュ、シュンくーん…、入ってもいい…?」 覚悟を決めて部屋の扉をノックして声をかけると、中からいいよと返事が返ってきて、ガチャリと開ける。 「…あの〜、」 「ん?」 「えっと…、さっき…その…。」 「こっちおいでよ。」 「え…。」 「そんな所に突っ立ってないで、こっちにおいでよ?」 ギッと椅子を軋ませそう言うが、その笑顔は、決して純粋無垢という訳ではない事は俺にもわかった。そして、シュンくんはシュンくんで、俺が言いたい事を悟ったらしい。 「あ、いや……。」 「なんで?これ、返して欲しいんでしょ?」 そう言って俺のスマホを差し出す。 取りに行きたい。今すぐにでも。 「や、えっと、まだいいや…、レポートの邪魔してごめん…。」 けど、今近付いたら絶対何かされると確信した俺は、チキって扉の前から動かなかった。 「あ、そう?じゃあまた欲しくなったら声かけてね?邪魔なんてこと、ないしさ。」 「う、うん…また言うね…。」 俺の返事に満足気な顔をしたシュンくんは、そのまま俺のスマホを自分のポケットにしまった後に俺を見てニッコリ笑った。 崩さないその笑顔にヒッと肩を揺らした時、ピンポーンとタイミング良く家のインターフォンが鳴り、逃げる口実に使える!と即座に反応する。 「誰か来たみたい!俺が出るから、シュンくんはレポート頑張ってね…!」 口早にそう言って、その場を後にした。 「神様…!」 今まで自分の荷物の時以外の来客には、居留守を使ってた。だから来客にこんな感謝したのは初めてに等しい。 ドタドタと階段を降りて、すぐさま玄関へ向かう。 「はい!どちらさ…ま……。」 「………。」 ありがとう!の意味を込めた満面の笑みでドアを開けるが、門の前に立つ来客を見た瞬間、自分の顔が一瞬にして強張ったのがわかった。 「ソ、ソウ…。」 「なんだよ、あの電話。」 だってそこには、眉間にしわを寄せ、見るからにご立腹なソウがいたから。 「いや、あの…。」 「あ?答えろよ。」 キィ…と門を開け、ズカズカとこちらへ向かって来るソウ。 まぁソウの立場からしてみれば、怒るのも無理はない。あんな電話を聞かされた挙句そのまま切られたのだから…。 「や、本当に申し訳ない…。」 「答えになってねぇんだけど?」 ペコッと軽く頭を下げるが、もちろんそんなんで収まるわけもなく…。だけど、今ここでソウを家に上がらせるわけにもいかず、どうにか怒りを納めて帰ってもらおうとした時。 「ナオくんー?誰だったのー?」 「っ!」 二階からシュンくんの声が聞こえた。 その声にギクリとするが、幸い降りてきてないので、ソウの事はバレていない。 「あの野郎…。」 シュンくんの声を聞いたソウの機嫌が一層悪くなり、ここで怒鳴り散らされる前に、声を上げる。 「っあ、あ!なんか宅配だった!お、俺ちょっと出掛けてくる〜!夜には帰るからっ!…ソウはちょっと来て!」 「あっ!?お、おい!」 シュンくんの返事も聞かず、一方的に叫んだ後、グイッとソウの腕を掴み家を出た。

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