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Page19:おかしくなった
「はい、バンザーイ。」
「うわっぷ!」
「次は下ねー、よいしょっと。」
「うわわっ!」
テキパキと無駄のない動きでTシャツとズボンを脱がされ、俺はパンツ一枚になった。
「…ふふ、ナオくん…。」
「っんだよ!ひ、人の体見て笑うなっ!どうせ俺はプヨってて…っ!」
「ちがうちがう。…勃ってる。」
「あ…っ!?」
クスッと笑うシュンくんの視線の先には、パンツに緩くテントを張る俺の股間が映っていて、無防備に開いていた脚を慌てて閉じる。
「脱がされて興奮した?それとも、さっきのキスが原因?」
「ち、ちが…!」
「っと、隠さないで。」
「ちょっ!手、離して…っ!」
自分でも気が付かないうちに熱を持ってた挙句、見られた恥ずかしさから顔を隠そうとするが、それを阻止するかのようにシュンくんが掴んだ。
「いやだ…、見ないで…。」
隠したくても隠せない、自分の情けない姿。
軽蔑されたらどうしよう…なんて、女々しいことを考えてしまう。
「…ナオくんさぁ、自分が今どんな顔して僕を煽ってるか、わかってる?」
「え…?」
「はぁ…、これでも僕、結構耐えてる方だと思うんだけど?」
「え、え…?」
俺の思いとは裏腹に、ため息を零しながら頭をよしよしと撫でるシュンくん。
煽るだの、耐えるだの言いながら、頭を撫でられる意味がわからなくて俺は戸惑う。
「もう無理、限界。…いい?」
「だっ、だめ!!」
「…いや、聞かないし。」
ギラッと瞳を光らせ、徐々に顔を近付けてくるシュンくんに対して咄嗟に拒否すると、気に入らないと言うような顔をして、今度は肌に触れようとしてくる。
「あっ!ちょ、こらっ!まって!」
「なに。」
「いや、だから…っ、その……。」
「…そんなに僕とは嫌?」
「え?」
限界間近に何度目かのお預けをくらい、不機嫌オーラが増すシュンくんにゴニョゴニョと口ごもらせていると、堪らなく切なげな声が聞こえた。
「アイツは良くて、僕はだめなの?」
「シュンく…」
「ナオくんは、アイツがいいの?」
「………。」
シュンくんが泣いてるように見えて言葉が出てこない。黙ったままの俺を見て、シュンくんはため息を零し、ソッと俺から離れる。
「僕、部屋戻るね。ナオくんも風邪引かないように早く…」
「ま、待って!」
その瞬間、俺は離れていくシュンくんを止めていた。
「待って…、違う…。」
俺は今きっと、おかしいんだ。
「だから…その…、俺はただ…っ!」
おかしくなった。
「ここは嫌だから…、へ、部屋に…。」
「………。」
「おいていかないで…。」
そうじゃなきゃ、こんなこと言ったりしない…。
「………。」
「………。」
沈黙と、ザーッと未だに流れ続けるシャワー。
俺は先程の、自分とは思えないセリフに、羞恥でシュンくんを見ることができず俯いていた。
「ナオくん。」
「…っ、」
名前を呼ばれ、体をビクつかせる。
シュンくんは俺の方に歩いてくると、キュッとシャワーを止め、スッと手を差し出した。
「一緒に行こ。」
パッと顔を上げれば、優しく微笑んでるシュンくんがいて。
「…うん。」
俺は迷わずシュンくんの手を握った。
「ほら、とりあえず髪拭くよ。」
「わふっ!」
「ふふっ、わふって…。」
「い、いきなり拭くからっ!」
「ごめん、ごめん。」
クスクス笑いながら俺の髪の毛をタオルでワサワサと拭いてくれる。それが段々気恥ずかしくなって、顔が熱くなるのがわかった。
「んっ、もう自分でできる…。」
「そ?」
「…シュンくんも、髪濡れてる…。」
「あー、僕もシャワーかかったからね。ついでに服も脱いでいこ。」
「えっ!?ちょ、シュンくん!?」
「んー?…なに、僕の裸みて照れちゃった?」
「べっ、別にそんなんじゃ、ないし…!」
俺と同じパンツ一枚になったシュンくんが、俺をからかうように笑い、それにムッとしてプイッとそっぽを向く。
「よしナオくん、このバスタオル持って。」
「え…。」
「行くよ、っと!」
「っ!?」
シュンくんはバスタオルを俺に持たせると、そのまま俺を抱き上げ、止める間も無く二階の部屋へ駆け上がって行った。
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