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Page27:痴態は全て黒歴史
「恥ずかしいッ!何が"いつ帰ってくるの"だ!!寂しがり屋の子供かっ!母さんにも言ったことないわ!!」
『あッ、いく、いくいく…っ、しゅん、く…っ、みてぇ…ッ!!』
「っ!うわあ〜〜!!なんか思い出しちゃったよぉ〜〜!!」
突然のフラッシュバックに、ゴロゴロとベッドの上をのたうちまわる。それは、思い出してはいけない昨日出来事。さっきの事といい、昨日の事といい、増えていく黒歴史が耐えられない。
「…くそっ!こうなったら!!」
俺はもう考える事を放棄して、パパッとズボンとパンツをその辺に脱ぎ捨て、ポチッと再生ボタンを押した。
『あぁんっ!そこっ、そこぉ…っ!!』
『はっ、センセ…、まじインランじゃんッ!』
『言わないでぇ…っ!!はぁあんッ!』
痴態の上書きは、これしかない。一人でヤッて、少しでも現実逃避できるなら、それくらいしてもいいと思う。
「ぁ…っ、は、ンン…ッ!」
男優のピストンに合わせて、ゴシゴシと気持ちいいところを擦る。くちゅくちゅと、いやらしい水音を立てながら自分の手を先走りで汚して、絶頂へと昇り詰める。
「ぁっ、あっ、やべ…っ、も、イキそ…。ティッシュ…っ、」
扱く手を早めて息を荒くさせ、視線はテレビに向けたまま、側にあったティッシュに手を伸ばした時。
「ただいまー。」
「ふぇっ!?…あ、ぅ…ッ!」
突然部屋の扉が開き、何食わぬ顔して入ってきたのは、数十分前に家を出たはずのシュンくんで…。
ビクッと肩を揺らした拍子に、あろうことかびゅくびゅくと白濁した液を撒き散らしてしまった。
「ぅ、く……っ、は…っ!?えっ、な……!?」
「ただいまって。」
「ぅ、お、おかえ…り…?」
もちろんティッシュが間に合うはずもなく、手や服に精子を付けながら、余韻に浸る事も出来ないまま返事をする。
『ひ…っん、イク…ッ!』
『センセ…ッ俺も、一緒に…!』
「うるさいね。」
俺たちの間で激しく喘いでいたテレビを不快そうに見て、容赦なくブチッと電源を落とし、俺のいるベッドに近付いてきた。
「こんな朝っぱらから…、なにやってんの?」
「いやっ、な、ん…で…、」
「うん?」
「だ、大学は!?」
出て行ったばかりの筈なのに、何故こんなにも帰りが早いのか…なんて、そればっかり気になってしまう。
「んー、誰かさんが寂しがるから、休講かな。」
「えっ?」
「そしたらまぁ…、一人でお楽しみ中とはね。」
「…っ、」
だが、それも一瞬にして俺の頭で「どうでもいい」枠に処理される。それもそうだろう、だって痴態の上書きを痴態でしてしまったのだから…。
すでに萎えた自分のを隠すように手で覆うくらいしか出来ていない俺は、シュンくんの視線に居た堪れず、顔を赤くする。
「ねぇ、僕もまぜてよ?」
「え、なに…、来ないで…。」
ぺろっと唇を舐めて、ギシリと音を立てながらベッドへ乗ってきたシュンくん。思わず後退るも、シュンくんはジリジリと近付いて来て、止まる気配がない。
「ひゃあぁ……、」
遂に背中にヘッドボードが当たってしまい、逃げ場をなくした俺が間抜けな声を出した瞬間、部屋にスマホのバイブ音が響いた。
「………。」
「………。」
その音にピタリと動きを止め、俺たちは三秒程見つめ合う。
「…電話、鳴ってるよ…?」
「…僕のか。」
シュンくんは少し怠そうな顔をしながら、俺に迫るのを諦めて鞄の中を漁り出し、俺はホッと息をついた。
「…はい。」
電話に出るシュンくんをボケーと眺めるも、自分の姿を思い出し慌てて後処理を始める。
「…なんで、」
「…?」
ふと、困ったような声色で話すシュンくんに視線を向ける。その表情は先ほどとは違い、真剣な顔をしていて、電話の相手や内容が少しだけ気になった。
既に乾いてしまった自分の精子をティッシュで軽く拭きながら、その横顔をチラチラと見る。
「いや、それは…っと、ちょっと待って。……ごめんね、下行くね。」
「え、あ、うん。」
俺の視線に気が付いたシュンくんが、謝りながら部屋を出て行くのを見て、俺に聞かれたくないのかな…と思ったけど、シュンくんのことだから気を使って部屋から出たんだとわかった。
「…んだよ…。」
わかったけど、俺は…それが少し気に食わなかった。
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