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Page28:リアルガチ鬼ごっこ

内容までは流石にわからなかったけど、電話越しから微かに聞こえた、少し高めの声。 「…あれは、間違いなく女だ。」 けどシュンくんの反応からして、女友達っていうような雰囲気ではなくて…、そうなるとやっぱり彼女…? 「…うわっ、手くさっ!!」 うーん…と顎に手を持っていくと、独特の臭いが鼻につき、素早く顔から手を離す。乾いた後に拭いたため、完全には拭き取れていなかった。 「洗いに行くか…。」 シュンくんのこと考えてたってわかるわけでもないし、別に相手が誰だろうも知ったことじゃない。だから別に……。 「会いに行く。」 「…っ!」 洗面所へ行こうと廊下を出た時、シュンくんの話し声が聞こえ、ピクリと肩が反応する。 丁度階段を降りたすぐ横で話してるらしく、俺は忍び足で歩き、静かに階段を降りて行った。 「僕は、嫌いな人にそんなこと言ったりしないよ。この意味、わかるよね?」 「………。」 「だから、待ってて。」 「………。」 「また連絡する…、うん、じゃあね。」 「………。」 「…はぁっ、まいったな…っうわ!ナ、ナオくん!?」 結局、洗面所へ行くに行けなくなった俺はその場で立ち尽くしていて、電話を終えてそれに気が付いたシュンくんは、ビクッと肩を揺らし、驚いた表情で俺を見る。 「い、いつから…。」 「ごめん!!」 「えっ?」 「盗み聞きするつもりはなかったんだけど!あんまり聞こえなかったから、内容とか本当にわかんないから!安心して!」 「え、あの、ナオく…」 「俺ちょっとデザート食べたくてさ!あはは!コンビニ行ってくるね!!」 「ちょっ…、」 「あっ、財布部屋だった!取りに行かなきゃ!あっ、心配しないで!シュンくんのも買ってきてあげるから!」 ドタドタと二階へ上がり、財布をポケットに入れて、またすぐに階段を降りた。 「ナ…ッ、」 「行ってきます!!」 何か言いかけるシュンくん言葉を遮り、顔を見ることなく、俺は颯爽と家を出た。 「はあっ、はっ、かは…っ、はぁっはぁ!」 それからずっと全力疾走。長い時間走っていたわけでもないのに、スピードを落とした時には汗と息切れが半端なく、自分にここまで体力がなかったのかと驚いたほど。 「は、おぇ…っ、はぁ…、はぁ…。」 それでも、足を止めることはしないでフラフラと歩き続ける。 「…大丈夫か?」 「あっ、はい……って、ソウ…?」 「何してんだよ、ナオ。」 背後から声をかけられ、振り向くと少し眉間にシワを寄せるソウがいた。 なんで会って早々そんな顔してんだよ、なんて思いながら足を止める。 「ソウこそ、何して……ッハ!」 まてまてまて!この人この前俺に何した!? 俺はこいつを許した覚えはない!! 「…?なんだよ?」 「イエ、ではこれで。」 「は!?ちょっ、おい!」 ソウに怒っている俺は、これ以上話す事はないと判断し、さらばっ!とその場から逃げるように自分が来た道を戻る形で再び走った。 「はぁっ、はぁ…っ!」 「ナァオォ!!待ちやがれェ!!」 「ひっ!?」 ソウの怒鳴り声が聞こえ、チラッと背後を見て激しく後悔する。鬼のような顔して、ゴゴゴという効果音が出そうなくらい恐ろしい雰囲気を漂わす化け物が迫ってきてるではないか。 「待てェ!!」 「ひぃぃ!!」 捕まったら殺られる!捕まったら殺られる!!捕まったら殺…っ! 「…っのやろ!!」 「っうわあああ!」 「ハハハ、つーかまーえたー。」 「ぐぅっ!」 体力にも限界が来ていた俺は、いとも簡単に背中からガッと抱きしめられるような形で捕まった。

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