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Page30:なぜ媚薬持ってるの

「そろそろ腕痛いんですけどー。」 「…ごめん。」 行く宛てもないまま、ソウの腕を引っ張り歩く事数分。くんっとソウの腕に力が入り、パッと手を離した。 「いや、別に怒ってないけどさぁ…。」 「………。」 「…はぁ、行く所ないなら俺の家来る?」 無言の俺を見て察したソウがため息を吐き、スタスタと一人で歩き出す。その後ろを何も言わずに付いて行った。 「…お邪魔します。」 「今誰もいないから、そんな畏まらなくてもいいぞ。」 「ん…。」 「飲み物持ってくわ。先に上行ってて。」 そう言って俺の頭をポンポンと撫で、ソウはキッチンへ向かい、俺は言われた通り二階に上がってソウの部屋に入る。 なんてことない、ただの部屋。 けどそこには昔の懐かしさが残ってて、ここで遊んだ記憶と共に、シュンくんの顔も思い出した。 「………。」 俺、何してんだろう。ソウから逃げてたくせに、ソウの部屋に来るなんて……。 「お待たせ…って、何突っ立ってんの。座れよ、ほらジュース。」 「ありがと…。」 「おう。」 言われるがままソファーに座って、渡されたコーラをゴクゴクと半分ほど飲み干す。そして、自己嫌悪で唇を噛んだ。 「ナオ。」 「え…?んむっ……。」 不意に名前を呼ばれ顔を上げれば、視界が一気に暗くなる。 目の前にドアップのソウの顔と、ふにっと唇に柔らかい感触。 「……ンンッ!?そぅ…っふ、ぁ…っ!」 自分がソウにキスされてると理解して、無意識に名前を呼ぼうと口を開けると、すかさず舌が入ってきた。しまったと思っても遅くて、徐々に激しくなっていくキスに抵抗もできなくなる。 完全に油断してた、そんな自分が招いた結果。 息つぎもままならなず、酸素不足。 何よりも、ふわふわと蕩けてしまいそうなソウとのキスに感じてる自分が、嫌で仕方なくて…涙が溢れた。 「ん…ぁ…っ、ンン…ッ!」 嫌なのに、いやなのに、気持ちいい…。 「…ッふはぁ…っ、はッ、はぁ……。」 唇が離された時には、くた…と全身の力が抜け切っていて、肺だけが忙しなく動き酸素を取り込んでいた。 口端から少しだけ唾液が垂れ、ぼーっとする頭で「拭かなきゃ…」なんて思い、手を動かした時。 「…う、ぁっ?は…ァ…ッ、」 じわじわと体の中から熱が広がり、顔が火照っていくのを感じた。その異様な熱は、先程のキスが原因ではないとすぐに気が付く。 「…フッ。」 「……っ、おま…俺に、なにした…っ!」 そんな俺を見て口角を上げたソウを、キッと睨み上げる。薄々わかっていたけど、そんなことするはずないと思いたかった。 「媚薬。ジュースに入れといたよ。」 けれどそんな希望は儚く散っていき、火照る体とは逆に、俺の瞳は絶望の色に変えていく。 「な、んで……っ、」 「んー、ナオのため?」 「はぁっ!?意味わかん…ッ!?」 「少し黙って。」 耐え切れず大声をあげる俺の唇に、「シー」と言いながら人差し指を当てるソウ。 何を考えてるのかわからず、ただただ睨む事しか俺には出来なかった。 「ツラそうだね、楽にしてあげようか?」 「んなの、全然へいきだ…っ!」 「…ふーん?」 「ぅ…くっ、は、ァ…んん…っ、」 ジッとしてるだけでも、体が疼いて仕方ない。 理性は嫌がっても、本能が触って欲しいと頭の中で叫ぶ。 こんなの、絶対ダメなのに…。 「さて…。ナオ、時間だ。」

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