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Page34:甘い男たち
床に転がっていたスマホが震えた。
着信画面を確認してから、通話ボタンを押す。
「…はい。」
『もしもし?ナオ?』
「違います。」
『あ?…あー、シュンくん?』
「………。」
『もしかして最中だった?それとも…事後?』
「…ナオくんは事後ですよ。」
『ハハッ!なるほどね〜。』
「で、アンタはナオくんに何飲ませたんですか?」
『急に敬語になっちゃって、おこなの?おこなの?』
「………。」
『無視かよ〜。ま、いいけど。…ナオの様子見て分かっただろ?何飲ませたか、なんて。』
「…びや、」
『ざんねーん!媚薬じゃなくて、ブランデー混ぜただけでした〜!』
「…は?」
『アッハッハ!言うと思った!そもそも媚薬なんて持ってねぇよ!ウケる。』
「……チッ。」
『ナオが昔、料理酒でベロベロになってたの思い出してな〜?タダで返すのも気に食わねぇし?吊り橋効果的な?媚薬って言ったら信じて発情してくれたよ。』
「…いい趣味してんね。」
『そりゃどーも〜。結果は、未遂で生殺しって所か?ははっ。』
「………。」
『…けど、今回だけだからな。次ナオにあんな顔させてみろ、容赦なく奪うから。』
「…ふっ、やっぱりアンタ、甘いね。」
『あ?』
「据え膳食わぬは漢の恥ってね。"あの日、ナオが泣き叫ぼうが無理やりにでもヤッちまえばよかった〜"って地団駄踏む未来が見えるよ。」
『んだと…?』
「アンタにナオくんは譲らない。」
『………。』
「じゃ、そういう事で。」
『…おい、ちょっと待て。』
「なに。」
『散々言ってくれてるけど、甘いのはお互い様だろ?どうせ寝こけてるナオが目も前にいても、何もしねぇくせに。…いや、何もできねぇのか。』
「………。」
『そんな小心者くんに一言。ザマーミロッ☆』
そう言い放たれた後、ブツッと一方的に電話を切られ、ツー、ツーと機械音だけが鳴るスマホをギュッと握り締めた。
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