34 / 146

Page34:甘い男たち

床に転がっていたスマホが震えた。 着信画面を確認してから、通話ボタンを押す。 「…はい。」 『もしもし?ナオ?』 「違います。」 『あ?…あー、シュンくん?』 「………。」 『もしかして最中だった?それとも…事後?』 「…ナオくんは事後ですよ。」 『ハハッ!なるほどね〜。』 「で、アンタはナオくんに何飲ませたんですか?」 『急に敬語になっちゃって、おこなの?おこなの?』 「………。」 『無視かよ〜。ま、いいけど。…ナオの様子見て分かっただろ?何飲ませたか、なんて。』 「…びや、」 『ざんねーん!媚薬じゃなくて、ブランデー混ぜただけでした〜!』 「…は?」 『アッハッハ!言うと思った!そもそも媚薬なんて持ってねぇよ!ウケる。』 「……チッ。」 『ナオが昔、料理酒でベロベロになってたの思い出してな〜?タダで返すのも気に食わねぇし?吊り橋効果的な?媚薬って言ったら信じて発情してくれたよ。』 「…いい趣味してんね。」 『そりゃどーも〜。結果は、未遂で生殺しって所か?ははっ。』 「………。」 『…けど、今回だけだからな。次ナオにあんな顔させてみろ、容赦なく奪うから。』 「…ふっ、やっぱりアンタ、甘いね。」 『あ?』 「据え膳食わぬは漢の恥ってね。"あの日、ナオが泣き叫ぼうが無理やりにでもヤッちまえばよかった〜"って地団駄踏む未来が見えるよ。」 『んだと…?』 「アンタにナオくんは譲らない。」 『………。』 「じゃ、そういう事で。」 『…おい、ちょっと待て。』 「なに。」 『散々言ってくれてるけど、甘いのはお互い様だろ?どうせ寝こけてるナオが目も前にいても、何もしねぇくせに。…いや、何もできねぇのか。』 「………。」 『そんな小心者くんに一言。ザマーミロッ☆』 そう言い放たれた後、ブツッと一方的に電話を切られ、ツー、ツーと機械音だけが鳴るスマホをギュッと握り締めた。

ともだちにシェアしよう!