37 / 146

Page37:ニンニン

「はは、ごめんごめん。なんか集中してたから声かけづらくて。」 「あー…、うん。」 ブツブツ言いながらゲームしていたけど、聞かれてないよな?なんて少し心配したが、シュンくんの反応を見て大丈夫そうだと安堵する。 「ん?どうかした?」 聞いていいのかな?…二人の仲のこと。 「シュンくんってさ、シュンくんって……。」 "メイさんと、特別な仲なの?" 「うん?」 「…っどこの大学行ってんのかなって!」 小心者の俺は、へらりと笑いながら咄嗟に思い付いた質問をしてしまった。 すぐに「俺のバカァ!!」と心の中で悪態をつくも、今更聞くことなんて出来なくて。 「大学?」 「う、うん…。」 二人の仲とか、数時間前の俺たちの出来事とか…、考え出したら止まらない。平然としていても、実際シュンくんとした事を思い出すだけで顔から火が吹き出そうだった。 …特別な相手がいるのに、男の俺にあんな事するなんて……。 「んー…、N大学だよ、ここから二十分くらいの所の。」 「あ、あー、はいはい!あそこね!あそこのN大に……、って、えっ、N大!?」 「…へへ。」 考えてたモヤモヤやらが一瞬にして消し飛ぶ程、俺はその答えに驚き、バッとシュンくんを見る。シュンくんは、まるでイタズラがバレた子供みたいに笑っていた。 「えっ、ちょ…っ、え!?」 「んー?ふふ、どうしたの?」 「ま、まさか……。」 シュンくんは、今俺が驚いてる理由も、また、何を考えたのか絶対にわかってる。 俺が通っていた高校は大学と一貫で、そこの生徒は、ほぼそこの大学に行くだろう。現に俺も、そこに行く予定だったのだ。…N大学に。 「うん、そうだよ。ナオくんと同じ高校に通ってた。」 「じゃ、じゃあ…っ!」 クラスは違えど同じ学年。 もしかしなくても、シュンくんは……。 「…知ってたよ、ナオくんこと。」 ここに来て、まさかの真実だった。 一緒の高校だったなんて、母さんから一言も聞いてない。 「まぁ、そんなこと今更いいじゃん。」 「!?そんなこと!?」 「それよりも、言っておきたい事が…、」 「二人共ー!ご飯よー!降りていらっしゃーい。」 シュンくんが何かを言いかけた時、母さんの声が下から聞こえ、一瞬沈黙に包まれる。 「あー…、先にご飯食べようか。」 「う、ん…。」 少し気まずい空気の中、俺たちは階段を降りて、母さんが待つリビングへと向かい、三人で食卓を囲んだ。 「ごちそうさまでしたー。」 ご飯を食べ終わった後、皿洗いを始める。 シュンくんは「手伝おうか?」と声をかけてくれたが気持ちだけもらい、母さんは「ありがとう」と言ってくれた。 「困ったわねぇ…。」 それからしばらくしてからの事、窓を見つめながら母さんが呟く。 「どうしたんですか?」 「今すごい雨が降ってるんだけど、京介さん、傘持ってないのよね…。…私、ちょっと駅まで傘届けて来るわね!」 決めた!と言わんばかりの笑顔で、イソイソと出かける準備を始め出す。 「は!?ダメに決まって…!」 「僕が行きますよ!」 手に泡を付けてて止めることが出来ない俺に代わって、シュンくんが母さんの腕を引き、止めてくれた。 「え?」 「僕が父さんに傘届けます!麻衣子さんは待ってて下さい。夜に、しかもこんな土砂降りの中、行かせれません。」 「でも…。」 「危ないですし、何かあったら僕が父さんに怒られてしまいますよ。」 そう言って笑うシュンくんはとても男らしくて。 「そう?じゃあ、お願いしようかな。」 母さんも嬉しそうに微笑んだ。 「うんうん、ええ話じゃのう。」 そんな中、俺はホロリと涙を流しながら、まだ皿洗いをしていた。 「じゃあ、行ってきます。」 シュンくんが傘を持って家を出る。俺もついて行った方が良かったのかもしれなかったのだが…。 「家は俺が守る。気をつけて行って参れ!」 土砂降りの中、行くのを躊躇ってしまったため、敬礼しながらシュンくんを見送った。 「全く、ナオも行きなさいよ。」 「いいや、俺には俺のすべき事があるのだ!」 「なによ?」 「それは…。」 「それは?」 「温かい風呂を沸かすことでござる!」 忍者のようなポーズをしながら、ダーッと風呂場へ走って行く俺の姿に、母さんは呆れたようにため息を溢した。

ともだちにシェアしよう!