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Page38:お前は誰だ?

「ふぃー、いいお湯だった〜。」 「アンタ、一番風呂くらいシュンくんか京介さんに譲ってあげなさいよ。」 風呂上り、サッパリした顔でペタペタとリビングへ来れば、母さんがジト目でこちらを見る。 あれから、風呂を沸かしてシュンくんの帰りを待っていたが、なかなか帰って来ないため先に入ってしまった。 「いや、俺もそう思ったんだよ!?けどなっかなか帰って来ないから…仕方なくと言うか、ね?」 グチグチ言い訳を垂れる俺を見た母さんは、呆れてものも言えない様子で、俺は目を逸らしながらソファに横になり、テレビを付けて適当に面白そうな番組を見始める。 「ただいまー。」 「ただいま。」 「あ、二人共お帰りなさい!シュンくん、ご苦労様!お風呂、入ってらっしゃい?」 「あ、はい…って、ナオくん、寝ちゃったんですか?」 「そうなのよ、後で起こすわ。」 「…ふふっ、起こさなくても、僕がベッドまで運びますよ。」 そして、シュンくんたちが帰ってきた頃には、夢の世界へ旅立っていたのだった。 **** 「…ん……。」 翌朝、家に鳴り響いたチャイム音で目を覚ます。脳が覚醒しきっていない俺は、すぐに反応する事が出来ずにいたが、次第にしつこいくらいチャイムが押され、家中に鳴り渡った。 「んーっ!うるせぇっ!」 常識を遥かに超えたやり方に、寝起きの俺は機嫌が一層悪くなる。ソファーベッドの方を見ると、シュンくんはもうおらず、時計は十時を差していて、母さんも仕事でいないと悟る。 そこでふと、昨日自分がベッドまで来た記憶がない事にが付いた。思い出すのは、お風呂を出てソファーでテレビを見ていた時の事で、その後の記憶が完全にない。 「あれからどうし……って、あーもう!しつこいな!誰だよ!!」 考えようとするも、その余裕すら与えないくらいチャイム音に、ドスドスと音を立てながら階段を降り、勢い良く扉を開けた。 「はい!?どちら様!?しつこいん…で、すけ…ど…。」 「ナオくん!」 「…えっ、メイさん!?」 門前に立っていたのは昨日会ったメイさんで、予想外の来客に戸惑いが隠せない。 「今いい、かな…?」 「えっ!?えっ、えー…!?」 寝起きだし、部屋着だし、いや昨日も部屋着だったけど、今俺以外誰もいないし…なんて、突然の事にワタワタと焦る。 「お願い……。」 だがポソリと聞こえた、か細くて今にも消えてしまいそうな声に、頭の中が一気に冷静になった。昨日とは違い、どこかほっておけない空気を纏うメイさん。 「い、今シュンくんいないけど、それでもいいなら…。帰ってくるまで上がって待ってる?」 急に来るなんて何かあったのかもしれないと思い、とりあえずシュンくんにメッセージを入れといた。 「うん、ありがとう…。」 門の鍵は空いてる事を伝えると、俯きながら入ってくる。そして、俺が玄関のドアを支え、メイさんが家の中へ入ろうとした時。 「さ、中に入っ……は?」 「…?」 「ちょっと待て。」 俺は思わず彼女の腕を掴み、足を止めさせた。 「え…?」 悪寒がする程、すごく気持ち悪い違和感に、掴んだ手に力を入れる。 「お前……、誰?」 「………。」 俺の言葉に、彼女の肩がピクリと反応したのを俺は見逃さなかった。

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