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Page39:変態の名は。
「え、いや、本当、誰…?」
見た目はメイさんなのに、昨日と何かが違う…そんな違和感に冷や汗が頬を伝う。
「…ふ、ふふ……。」
「え…、っうわ!?」
急に笑い出した彼女を不審に思ってすぐ、掴んでた手を振り払われて今度は逆に腕を引っ張られた。支えがなくなったドアは、俺たちを中に入れてパタンと閉まる。
「いってぇ…、なんなんだ一体…!」
玄関に尻餅をついた俺は、ジンとする尻に顔を歪めながら相手を見上げた。彼女は腕を組んで俺を見下ろしている。
「よく、気が付いたね?」
「はぁ?」
「バレたの、シュン以来だよ。」
「…はい?」
言葉の意味に理解が追い付かず、俺は間抜けな声を出し目を点にした。
「はぁ…。だから、コレ。」
「…!?」
そして彼女は、察しが悪い俺にため息を零しながら、突然バサッ!と黒髪ロングヘアーを床に落とした。
「たく、わざわざスカートまで履いてきたのに即バレかよ。」
黒髪ロングヘアーに代わり、黒髪短髪ストレートヘアー、若干声色も低くなって、スカートを履いた……男の子。
「へ…っ、」
「…あ?なんだよ。何か言いたげな…」
「へ、変態だーッ!」
「は!?」
「うわぁああ…っ!変態だーッ!!」
ゾワゾワと背筋が震えて総毛立つ。扉の前に立ちはだかれて逃げ場無き今、大声を出す事しか出来ない。
「ちょっ、ちょ!うるさい!!」
「うわぁっ!近寄んなっ!お、おまおま、おまえっ!おと…っおとッ!?」
「いいから黙れや!落ち着け!」
「っいでぇ!!」
声を荒げ暴れる俺は、彼から理不尽なゲンコツを食らわされた。
「…で、お前、なに、誰。」
「おい。」
「あ、近寄らないで下さい。そこから動かないで。質問に答えて。」
「お前なぁ…。」
彼を玄関に立たせたまま、少し距離を取ってビクビクしながら話しかける。一刻も早く家から追い出したいが、俺の言う事を聞きそうにもなく、それならこれ以上家に侵入させないのが俺の、自宅警備員の務めだ。
「…俺は綾瀬琉依(あやせ るい)。メイの双子の弟でシュンの幼なじみ。」
「………。」
「これで満足?早くこっち来いよ。」
「…いやいや…、いやいやいや、そんな姿で言われても…。」
「いいから来いや。じゃなきゃ俺から行ってもいいんだぜ?」
「今そちらに行きますので、一歩も動かないで下さい。」
片足を上げる素振り見せられ、俺は諦めてそろそろっと少しずつ近くに寄る。
「…てか、何これ!?どういう状況!?」
確かに昨日メイさんが、「ルイちゃん」って単語を出していたのは聞いた。だから「姉妹かな?」くらいに思っていたんだ。
「でもね!?こんな、メイさんのであろう服を着て!こんな、メイさん風なカツラ被った!女装男子があの可愛いメイさんと双子!?そんな双子の片割れが俺の家に何しに来たんだ!?」
「…お前、死にてぇのか?」
「はひっ!?」
「心の声が全部口に出てるぞ。」
「…サーセン。」
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