39 / 146

Page39:変態の名は。

「え、いや、本当、誰…?」 見た目はメイさんなのに、昨日と何かが違う…そんな違和感に冷や汗が頬を伝う。 「…ふ、ふふ……。」 「え…、っうわ!?」 急に笑い出した彼女を不審に思ってすぐ、掴んでた手を振り払われて今度は逆に腕を引っ張られた。支えがなくなったドアは、俺たちを中に入れてパタンと閉まる。 「いってぇ…、なんなんだ一体…!」 玄関に尻餅をついた俺は、ジンとする尻に顔を歪めながら相手を見上げた。彼女は腕を組んで俺を見下ろしている。 「よく、気が付いたね?」 「はぁ?」 「バレたの、シュン以来だよ。」 「…はい?」 言葉の意味に理解が追い付かず、俺は間抜けな声を出し目を点にした。 「はぁ…。だから、コレ。」 「…!?」 そして彼女は、察しが悪い俺にため息を零しながら、突然バサッ!と黒髪ロングヘアーを床に落とした。 「たく、わざわざスカートまで履いてきたのに即バレかよ。」 黒髪ロングヘアーに代わり、黒髪短髪ストレートヘアー、若干声色も低くなって、スカートを履いた……男の子。 「へ…っ、」 「…あ?なんだよ。何か言いたげな…」 「へ、変態だーッ!」 「は!?」 「うわぁああ…っ!変態だーッ!!」 ゾワゾワと背筋が震えて総毛立つ。扉の前に立ちはだかれて逃げ場無き今、大声を出す事しか出来ない。 「ちょっ、ちょ!うるさい!!」 「うわぁっ!近寄んなっ!お、おまおま、おまえっ!おと…っおとッ!?」 「いいから黙れや!落ち着け!」 「っいでぇ!!」 声を荒げ暴れる俺は、彼から理不尽なゲンコツを食らわされた。 「…で、お前、なに、誰。」 「おい。」 「あ、近寄らないで下さい。そこから動かないで。質問に答えて。」 「お前なぁ…。」 彼を玄関に立たせたまま、少し距離を取ってビクビクしながら話しかける。一刻も早く家から追い出したいが、俺の言う事を聞きそうにもなく、それならこれ以上家に侵入させないのが俺の、自宅警備員の務めだ。 「…俺は綾瀬琉依(あやせ るい)。メイの双子の弟でシュンの幼なじみ。」 「………。」 「これで満足?早くこっち来いよ。」 「…いやいや…、いやいやいや、そんな姿で言われても…。」 「いいから来いや。じゃなきゃ俺から行ってもいいんだぜ?」 「今そちらに行きますので、一歩も動かないで下さい。」 片足を上げる素振り見せられ、俺は諦めてそろそろっと少しずつ近くに寄る。 「…てか、何これ!?どういう状況!?」 確かに昨日メイさんが、「ルイちゃん」って単語を出していたのは聞いた。だから「姉妹かな?」くらいに思っていたんだ。 「でもね!?こんな、メイさんのであろう服を着て!こんな、メイさん風なカツラ被った!女装男子があの可愛いメイさんと双子!?そんな双子の片割れが俺の家に何しに来たんだ!?」 「…お前、死にてぇのか?」 「はひっ!?」 「心の声が全部口に出てるぞ。」 「…サーセン。」

ともだちにシェアしよう!