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Page42:シーッ!!!
「ルイ、いい加減にしないと本気で怒るぞ。」
「………。」
「…もういい、勝手にしろ。ナオくん、上行こうか。」
「へっ!?」
嫌だと言うが理由を言わないルイくんに、シュンくんは遂に痺れを切らし、俺を見てニコリと笑う。突然名前を呼ばれて、俺は戸惑った。
「上。」
ピッと人差し指で上を指し、いつもの声のトーン、いつもの笑顔で俺に言う。それが逆に怖いけど、でも、ルイくんを残して行くわけにいかない。
だって、ルイくんはシュンくんのこと……。
「シュンくん、あの…、」
「シュンが悪い。」
俺の声に被せて、俯いてるルイくんがポツリと呟いた。
「…なに?」
「シュンが悪いんだろ…。シュンが俺を、選ばないから……。」
その声は小さく震えて、やがて、ポタポタと涙がルイくんの頬を伝う。
「俺が、誰よりも一番先に…、シュンを好きになった…。」
「ルイくん…。」
俺はきっと無意識に、ルイくんがシュンくんを想う気持ちを、軽くみていたのかもしれない。
「俺が一番……っ、シュンのことが好きなのにっ!」
泣いて訴えるルイくんを見て、その重みを知った時、同情心から少しでもキスを受け入れてしまっていた自分を恥じた。
「ルイ、僕は…、」
「ずっと、メイが羨ましかった。女で、俺にないものを全部もってるメイが…。だけど、そんなこと言っても仕方ないから…っ、最初はずっと、隠してきたんだ……。」
「………。」
「でも、でも…っ、好きって気持ちは止まらなくて、たくさん悩んで、告白したのに…っ!」
告白という言葉にドキリとする。それと同時に、告白していた事実にショックを受ける自分がいた。
「…ルイ…。」
「シュンは、俺をそういう対象で見れないって言った!それは俺が男だからだろうって…っ、だからメイの格好までしたんじゃんかぁ…!」
訴える大きな声と共に、大粒の涙が宙を舞う。
想っても想っても叶わない、行き場を失った気持ち。…きっとルイくんの女装は、ほんの少しだけの可能性に賭けたんだ。
「なのに…、なのに…っ!なんでコイツはいいんだよ!?」
「え…っ?」
突然ルイくんに指を差され、ドキッとする。
「コイツなんか相手が誰だろうと簡単に流される、ただ淫乱なだけだろ!?」
「ルイッ!!」
「…っ!」
シュンくんの怒鳴り声が響き、ルイくんがビク付きながら言葉を詰まらせた。
「……っ、」
そして俺は、ルイくんの言われた事に何も言えなくなって、服を握る手に力を入れる。途端、胸がギュウと締め付けられる感覚に襲われて、息苦しくなって、口元をヒクつかせた。
思い出すのは、高校時代。ルイくんは、知っているのか?俺が高校の時、何があったのか…。何故?…それなら、シュンくんは…?
ドキドキと心臓がうるさくて、ぶわっと冷や汗が溢れてくる。
「な、んだよ…!本当のことだろ!?乳首触っただけで、あんなに気持ち良さそうにしてたくせにっ!!」
「………。」
「………。」
その場の空気が一気に凍るのを感じて、今度は別の意味で冷や汗が出た。
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