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Page50:シュン様に抜け目なし
「…あ、ところでさー、聞きたい事あるんだけど。」
「うん?」
ふと、思い出したかのようにシュンくんが口を開く。
「なんで女装したルイがメイじゃないってわかったの?僕は小さい頃よく一緒にいたからわかったけど…、あの女装、本当にメイそっくりだったでしょ?」
そう言われ、女装したルイくんの姿を思い出す。確かに、あの女装はクオリティーが高くて、声もそんなに低くなく小柄だから、ぱっと見全然分からなかった。
「雰囲気がなぁ…。」
「雰囲気?」
「うーん、一回目会った時と雰囲気が全然違うように感じて…。」
たぶんきっと、メイさんに会っていなかったら女装したルイくんに騙されてたと思う。
「へぇ、そうだったんだ。」
「あと、名前かな。」
「名前?」
「うん。来た時に俺のこと"ナオくん"って呼んだんだ。メイさんは"ナオちゃん"だったから…。」
「なるほど。」
「でも、もしまた女装してもきっとすぐわかっちゃうよ。」
ルイくんには悪いけど…と控えめに笑うと、急にシュンくんの顔付きが変わった。
「…あのさ、一応言っておくけど、ルイも男だから。」
「…っ?うん。」
真剣な表情でずいっと俺に近付き、顔と顔との距離が近くなってビクッと肩を揺らす。当たり前のことを言うシュンくんに、何故そんなことを言うのか頭にハテナマークを浮かべる。
「だから…、あんま隙見せないで。」
「…?はい。」
「…絶対わかってないよね。」
訳が分からなかった俺は、とりあえず返事をしてみたけど、そんなことはシュンくんにはお見通しだった。
「…あ、ねぇシュンくん。」
「ん?なに?」
今度は俺が口を開いた。
「もしかしてさ…、この前、家の前でキスしてた相手って…。」
「あぁ、ルイだよ。」
「やっぱり…。」
ルイくんがシュンくんに告白した事があると聞いて、そうじゃないかって少し思ってた。
髪型や背丈が似てたのもそうだし、もしあれがメイさんだったら、あんな事の後に平然と俺の家にいれないと思う。
…あれ、でもルイくんは「シュンとキスしたかった」みたいなこと言ってなかったっけ…?
「でも、キスはしてないけどね。」
「え?」
心の声を聞かれたのかと思うほど、タイミング良く答えが返ってきて、パッとシュンくんを見た。
「されそうになったけど、思わず手でルイの口抑えちゃった。」
「へ、へぇー。」
ははっと笑うシュンくんに全く抜け目がなくて、少しルイくんを不憫に思ったことは秘密にする事にした。
「でも、あの時は流石にびっくりしたね。メイの姿で現れたと思ったら、泣きながら襲ってくるんだもん。…まぁ、ルイの女装は初めてじゃないけど。」
「えっ、そうなの?」
「そうだよ、結構前だけどね。ルイって変わったバカと言うか、なんと言うか…ね…。」
二人の過去に何があったのか少し気になったけど、思い出して遠い目をするシュンくんを見て、察した俺は聞くのをやめた。
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