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Page51:散らせ花びら
「…本当は、ルイにナオくんを会わせたくなかったよ。」
「え?なんで?」
「絶対何かする思ったからね。…まぁ実際したんだけど。だから再婚して、義兄弟が出来たことは内緒にしてたんだけど、父さんがルイたちの親に話しちゃったんだ。そしたらルイから電話来るし、なんか軽いヒステリック起こしてるし…。」
もう大変だった…と、ため息を零しながらシュンくんがボヤいた。
「え…、電話って…。」
「家の前でキスされそうになった日、ナオくんが家を飛び出す前に僕が電話してたの覚えてない?あれ、ルイからだったんだよ。」
「えっ!あ、そうだったんだ…。」
特別な女の人からだと思わせるくらいに、シュンくんはルイくんの事をちゃんと大切に思っているんだと知る。
「なのにナオくん、急に僕のこと避けるわ、挙句にアイツと……。あ、なんか思い出したら腹立ってきた。」
「っ!?」
「ねえ、ナオく…」
「無理です!本当に無理ですよ!さっきの今ですので!無理ですから!」
唐突に空気の流れが変わり、背筋がゾクッと冷えたのを感じて、シュンくんが何かのスイッチを入れる前に俺は全力で拒否した。
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『なぁ、お前の声ちゃんと聞かせて。』
「ハッ…。」
まるで耳元で囁かれたかのような声が頭に響き、反射的に目が開いた。見覚えのある天井を見つめ、ドクドクとやけに煩い心臓の鼓動を感じる。
「…悪夢や…。」
「あ、ナオくん起きた?」
久しぶりに見た夢でモヤモヤしてると、シュンくんが部屋に入ってきて、その姿に少し安堵しながら体を起した。
「ん…、おはよ。」
「おはよう。朝ごはん出来てるよ。」
「あれ…?学校は?」
「今日は休み!」
「そっか。」
「ほら、先に服着て!風邪引くよ。」
はいっとシュンくんにTシャツを渡されて、初めて自分が半裸だった事に気が付く。
「あ、ありがと。そういえば、母さんはもう仕事行ったか…なっ!?」
「あぁ、麻衣子さんはもう行ったよ。…ん?どうかした?」
Tシャツを受け取ったまま固まる俺を、シュンくんはニヤニヤしながら見てきた。
「こ、これ…、なんスか…。」
「えー?昨日言ったじゃん?僕の痕でいっぱいになればいいって。寝てる間につけちゃった!」
てへっと言わんばかりに首をこてんと倒す。
そのあざとさに一瞬でも騙されそうになった自分が憎い。
「だ、だからって…っ!こんなにキスマーク付けなくてもいいだろ!?」
服で隠れて見えないところばかりだけど、日焼けなどしていない俺の肌には、赤い痕がくっきり付いていた。
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