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Page53:春先に見えた夏の色
嫌な汗がぶわっと吹き出たのがわかって、思わず顔が引きつる。
「卒業して以来か?今何してんの?」
「な…んで…。」
「なんでって、普通に気になったから?」
キョトンとしながら答えるのに対し、そんなこと聞いてるんじゃないと言いたかったが、グッと言葉を飲み込む。
「元気か?」
と笑うのは、高校の友人、ハル。
「………。」
無言でこちらを見てるのは、ナツ。
二人は高校に入って最初に出来た友達。
だが卒業後、俺は一方的にこの二人との関係を絶ったため、正直会いたくなかった。
「ナオくん…?」
「あ……。」
名前を呼ばれ、シュンくんの存在にハッとする。
「…シュンくん、行こう。」
家族になったシュンくんには、絶対に知られたくない過去の出来事。
余計な事を言われる前に、早くこの場から消えたくてシュンくんの手を掴んで二人の横を通り過ぎようとした。
「…さすがにシカトは酷くねぇか?」
「…っ、」
だがナツの言葉に、思わず足を止める。
「無視すんなよ、ダチだろ?」
「そうだよ、ナオ!久々なんだし、もっと話そうぜ?」
「なぁ、ちょっと付き合えよ。」
「ほんの少し!ナオ、連絡先も変えてるし家に行っても居留守で会ってくれなかったじゃん!」
…それだけ会いたくなかったってことだと、分からない程鈍い奴らじゃないくせに。
「それとも、ここで"あの話"する?」
「な…っ!」
断る理由を考えていた時、一番触れて欲しくない話題に触れようとするナツを、睨むように見る。
「付き合ってくれるな?」
「…わかった。」
完全なる脅し文句に、俺は渋々ついて行った。
『ごめん、シュンくん…。先に帰っててもらっていいかな…?』
『待ってるよ?』
『あ、いやっ、いつ終わるかわかんないし…、…お願い…。』
『わかった。』
先程交わしたシュンくんとの会話を思い出し、意外とあっさりしてたなとぼんやりしていたら、いつの間にか人気が少ない非常階段付近に着いていた。
「なぁ、今何してんの?」
「…警備の仕事。」
「ふーん。」
嘘はついてない!本当にしている!…自宅の。
「ははっ、どうせ自宅の〜とか言うオチだろ!」
「!」
「え?マジで?」
誤魔化そうとしたが、ハルに核心をつかれギクリと反応してしまい、即バレた。
「うわ、ニートかよ〜!」
「うっせ。」
「ははっ、顔に出るとこ変わってねぇなぁ!」
そう言って笑うハルの笑顔も変わっていなくて、なんだか複雑な気持ちになる。
「ナオ、一緒にいた奴、誰?」
「…兄弟。義理の。」
「母親、再婚したんか。」
「うん。」
「そっか、よかったな。」
今度は、ナツが少し微笑んでポンと俺の頭に手を乗せた。
なんだよ…、なんなんだよ…。
「…なんで、そんなに普通なんだよ…。」
俺が、俺だけが、あの時のことを引きずっているみたいだ。
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