「なんで、そんな平然と俺に話しかけれるわけ…？」 ぎゅっとチョコのクッションを抱きしめ、顔を隠す。なんかすごくとても、泣きそうになったから。 「え、なんでって…、なぁ？」 「俺ら友達じゃん。」 「友達はあんな事しない！」 あんな事、絶対……。 「…え、別に普通じゃね？」 「たかが抜き合いだろ。」 「…は…？」 たかが、抜き合い…？あれの？どこが？あんな一方的で、『たかが抜き合い』で済ますのか？ 「えーっと、誰だっけ、ほら…ユウシくん？だったっけ？本屋のバイト先の。あいつともなんかしてたよなぁ？」 「は、はぁっ！？な、に言って…！」 「俺バックヤードで聞いたもん。ナオは夢中で気付いてなかったけど、ユウシくんは気付いてたよ、俺のこと。」 「そ、な……。」 過去の忘れたい記憶たちが鮮明に蘇って、頭がおかしくなりそうだ。 「お前、ほんと快楽に弱いっつーか、流されやすいっつーか…、ド変態だったよな。」 「…っ、あ、あんなの…！あいつも、お前らも無理やり俺を襲ったんだろっ！」 俺が好きでやってたみたいな言い方をされ、カッと頭に血が上った俺は怒鳴った。 「言うなぁ、ナオ。お前もあんなにノリノリだったくせに、そんな言い方するんだ？」 「い…っ！」 そんな俺が気に入らなかったのか、ハルが俺の手を掴んでダンッ！と壁に押し付けると、チョコのクッションがドサッと地面に落ちた。 「ちょっ、なに…っ！」 「じゃあさ、今からお前が勝負に勝てたら、そういうことにしてやるよ。」 「は…？勝負…？」 「そう。お前は嫌だったんだろ？あくまで俺たちがお前を襲ったって言いたいんだよな？」 「あ、当たり前だっ！」 「だから、お前が"お願い"しないで、ちゃんと抵抗できたら、そういうことにしてやるよ。」 フッと怪しげに笑うハルの言葉に、ドクンと心臓が鳴り、嫌な汗が頬を伝う。 「それって…、ここで俺になんかすんの…？」 「…ナツ、異論は？」 「ない。」 「っ待て！俺はある！絶対嫌だからな！」 俺の質問を無視したハルを肯定と捉えた俺は、直ぐさま拒否する。 「じゃあ今までのことは合意だったって事でいいよな？」 「な、ん…っ、」 「だってそうだろ？あんだけヨガってたくせに、無理やりってのはあんまりだ。」 「ナ、ナツ…っ！」 ハルとああ言えばこう言うやり取りしか出来ず、埒が明かないと判断した俺は、ハルの背後にいたナツに助けを求めるかのように声をかけた。 「俺もショックだぜ、ナオ。俺らの三年間って、なんだったわけ？」 だが、そんな希望もすぐに崩れ落ちた。