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Page55:虫除け
「ほら、後ろ向けよ。」
「ハ、ル…!」
後ろを向かそうとしてくるハルが、過去のハルとダブって見える。
「クズクズしてんな。」
「ナツ…!お前までやめ…っぅ!」
二人がかりで抑えられては、当然力で敵うはずもなく、簡単に後ろを向かされ壁へ押し付けられた。
右手はナツ、左手はハルにそれぞれ掴まれ、壁に固定されてしまえば逃げることもできない。
「や、やだっ、なんで、お前ら…っ!」
「大丈夫、ナオのいいところ覚えてるから♡」
「やめ…っ、ぁッ!」
早速と言わんばかりにズボン越しから股間を弄られ、小さい喘ぎが口から出た。
こんな状況でもお構いなしに出る自分の吐息が、本当に情けなくて涙が溜まる。
「ははっ、ナオは触られるの大好きだもんな〜!」
「初フェラん時は、ヒンヒン言ってたしな。」
「や、だ…っぅあぁ…ッ、こんなの…!」
本当に嫌だ。逃げたい、帰りたい。なのに、力が入らなくて…。
「お?もう半勃ち?はえーな。」
「ひっ、や、ちが…っ!」
「体は正直だなぁ。そうだよな、お前が快楽に抵抗出来るわけがねぇよな。」
「…っ、」
フッと笑ってそう吐き捨てられたナツの言葉に、ズキッと胸が痛む。
「お前の声、ちゃんと聞かせて。」
そして聞き覚えのあるセリフに、俺は思わず目を見開いた。
「いやだ…、やめて…、俺はもう…っ、」
もう好きじゃない人たちと、こんなことするのは……。
「ほら、ナオ。服脱がすから、って……。」
「………。」
俺の服に手をかけたハルに続いて、ナツまで黙り込み、二人の手がピタリと止まった。
「……?」
「おい…、なんだよこれ…。」
背中をジッと見つめ固まる二人が、何を見てるかなんて俺にはわからず、視線の先に何があるのか気になる。
「な、なに見て…、」
『僕の痕でいっぱいになればいいよ』
…まさか…。
「おいナオ、なんだよ、このキ…」
「はーい、そこまで。」
ハルが何かを言いかけた瞬間、パンッと一回手を叩く音と共に陽気な声が響いた。
「お、お前…。」
「シュンくん…っ!?」
声の主は、ヒヤリと冷たい笑顔のシュンくんだった。
「えっ、な、なんで…っ、帰ったんじゃ…!?」
「ナオくん置いて帰るわけないでしょ。…ねぇ、これどんな状況?」
「こ、これは…、その…。」
押さえつけられ、服を半分脱がされてる状態な俺に言い逃れなんて出来ず口ごもっていると、ナツが口を開いた。
「このキスマーク、お前か?」
「そうだけど?」
「ちょっ!?」
なにサラッと暴露しちゃってんの!?
「…へぇ、あんなに嫌がってたのは、ちゃっかりヤる相手がいたからだ?」
「な…っ!」
「俺たちが無理やりとかなんとか言って、今の相手も男かよ。そうだよな、あんなに良さそうにしてたら女も抱けねぇわな。」
「…っ、」
「最後の一年、俺らと何回やったっけ?お前は何回俺らに"お願い"したんだよ?」
「………。」
もう、言葉が出なかった。
必死で忘れようとしたのも、隠そうとしたのも、全部全部水の泡。
「お前ほどビッチで淫乱なやつ、見たことねぇよ。」
冷たく乱暴に言い放された言葉に、俺の涙腺が崩壊して大粒の涙が瞳からこぼれ落ちた。
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