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Page58:君への特別

花火なんて何年振りだろうか。…ちょっと、行きたいかも。 それに、そろそろソウともちゃんと話をしなくちゃいけないような気もする。 「場所は…、」 「行かないよ。」 どこ?と言おうとした俺の言葉を、シュンくんが遮った。 「あー?別にお前に聞いてねぇよ。」 「ナオくんは行かない。」 「シュ、シュンくん…。」 シュンくんは、きゅっと俺の手を強く握ってソウを睨む。 「だめだよ、ナオくん。行っちゃダメ。」 「で、でも…、」 「こいつに何されたか忘れたの?僕は許さないから。」 「………。」 シュンくんの言葉にグゥの音も出なくて思わず黙る。 「なんでお前の許可がいるんだよ。」 「兄弟だから。」 「いや、それ関係あるか?」 「あるよ。自分の身内が危ない目に合いそうだったら止めるでしょ。」 「別に何もしねーって。」 「信じると思う?」 バチバチと火花が飛びそうな勢いで言い合う二人。シュンくんがそう言うのは、今までの出来事からすれば当たり前だ。 でもだからって、ずっとこのままにしとくのも、良くないと思う。 「…ソウ、絶対何もしないって約束する?」 「っ!ナオくん!?」 「あぁ、何もしねぇ。」 「じゃあ、行く。」 そう言って、俺はシュンくんから手を離した。 「っし、決まりだな。」 「シュンくん、あの、俺……。」 「…いいよもう。好きにすれば?」 「え…?」 シュンくんは、俺を突き放すかのように冷めた口調で言い放った。 「行きたいんでしょ?じゃあ行けばいいよ。夜ご飯はいらないって麻衣子さんに伝えとくね。あとチョコのやつも洗っとく。」 「シュンく…っ、」 「気を付けてね。」 それはまるで、他人事のようで。 「…っ、」 明らかに作った笑顔を見せられた俺は、シュンくんの内側から、外側の人間になったのだと確信する。 シュンくんはもう何も言わず、振り向きもしないで家の中へと消えて行った。 「なんだあいつ、あんな突っかかってきたのに最後はすげぇあっさり…。」 「…ソウ、行こう。」 「あ、あぁ。」 まさか、シュンくんからあんな笑顔を見せられるとは思ってなかった。会った時から今まで、俺に対するシュンくんの態度は特別で…。 だから今、こんなにも辛いと思うのは、俺もシュンくんに対して特別だったからだと思う。 「楽しみだな?」 「うん…。」 初めて会っ時は、関わらないようにしようって思ってたのに……。 「おぉ、屋台もあるのか。すげぇな!」 「ん…。」 家から歩いて数十分後、段々人と灯りが多くなり楽しそうな声に包まれる。 「…お前なぁ、すげぇと思うならもう少し楽しそうな顔しろよ。」 「え、あっ、ごめんっ!」 シュンくんの事を引きずって俯いてた俺は、ハッと顔を上げる。 自分で行くと言っといて、流石にこの態度は誘ってくれたソウにも失礼なわけで…。 「気分乗らないなら帰る?別に無理しなくてもいいぜ。」 「あ、いや!本当にごめん。でも行きたいって思ったのは本当だから…!」 いつまでもシュンくんのことばかり考えていても仕方がない。とりあえず今は、ちゃんとソウと花火大会を楽しもう。 「ん、ならいいけど。なんか食うか?」 「うん!俺、焼きそばとイカ焼きとりんご飴とわたがしとチョコバナナとジャガバターとカステラ食べたい!」 「食い過ぎじゃね?」 「あと肉巻きおにぎり!」 「いやだから食い過ぎじゃね?」

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