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Page66:兄弟

喚起のため窓を開けてから、俺は廊下にいたシュンくんを部屋に呼ぶ。俺はベッド、シュンくんは勉強机のイスに座った。 「顔の痣、だいぶ良くなったね。」 「あ、うん、もうそんなに痛くないし!」 会ったらギクシャクするんじゃないかと思ってたが、案外普通に話が出来て少しホッとする。 「父さんの本気は痛いよねー。」 「うん、今までで一番痛かった…。」 これを機に、仲直りできないだろうかとふと思う。喧嘩してるわけじゃないけど、やっぱりいつもと俺に接する態度が違う感じがした。 多分、きっかけはソウと花火を見に行ったこと…。それなら、素直にソウから告白されたと言って、俺がなんて答えたのかを伝えればいいんじゃないか? 「きっとそれが一番いい」と思った俺が口を開いた時。 「…シュ、」 「ねえ、ナオくん。」 俺より数コンマ早く出てきたシュンくんの言葉によって、俺の声は言葉になる前にかき消されてしまった。 「あっ、なにっ?」 それに少し気恥ずかしさを覚えながら、シュンくんの話を待つ。 「あのさ、僕たち…。」 「うん…?」 「…僕たち、普通の"兄弟"に戻ろうか。」 「……え?」 一瞬何を言われたか理解出来なくて、頭の中が真っ白になる。脳は理解しようと処理を進めるが、心がそれを理解したくないと反発し合い、息が詰まった。 ドクドクと早くなる鼓動と共に、ギュッと心臓を掴まれる痛さが俺を襲い、嫌な汗が吹き出る。 「考えたんだけど、やっぱり家族になった以上、一線超えちゃだめだなぁって思って…。まぁ、今更僕が言える立場でもないけどさ…。」 「………。」 「でもやっぱ最後は結婚して、親に孫の顔を見せてあげたいし、ナオくんには本当に好きな人と幸せになってもらいたい。」 それは、俺たちの関係が、この距離が、これ以上進むことはないってこと…?シュンくんは、それを望んでいるの…? 「…そ、そう、だね…。」 なんて、そんなこと聞けるわけがない。 だってきっとそう望んでるから、シュンくんは俺に言ったんだ。 「シュンくんも、好きな人と…け、結婚…とか、したい、もんね…?」 「…うん。」 あ、やばい。 「…っ、あ、はは、まぁ、そりゃそうだよねっ!俺も…、俺も、それがいいと思う!」 泣いてしまう。 「ナオく…」 「っごめん!俺、ちょっと約束があるから行かなきゃ!」 泣く姿なんか見せたくなくて、必死に堪えて精一杯の笑顔を向けて…俺は家を飛び出した。 「…っふ、ぇ…、」 途端、限界を超えてボロッと大粒の涙たちが頬を伝った。 「…お?あれは…、奈央か?」 そんな俺が走って行く後を、この世で一番嫌いな人物が付けてきているのも知らずに。

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