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Page74:さらばスマホ

「なぁ、何があった…?」 「…っぅ、」 ソウの声が切なくて、俺もぎゅっと抱き締め返す。それでも俺は言葉には出来なかった。 「…やっぱ俺じゃ、頼りねぇか…。」 「っそんなんじゃない!そんなんじゃない、けど…っ、俺は、守らなきゃいけないものがある…っ!」 誰かに頼ってしまえば、それは壊れてしまう。 そう思っただけで、恐怖に駆られる。 「おれは、家族を守りたい…っ、」 シュンくんや京介さんに何かあったら、きっと母さんは……。もう母さんの悲しむ姿を、見たくないんだよ…。 ボロボロと涙を零し泣く俺を、ソウは苦しいくらいに抱き締める。 「…わかったよ、ナオ。もう無理に聞いたりしねえ。」 「ソウ…っ、俺は…!」 頼りないから、頼らないんじゃない…そう言おうとしたが、ソウが人差し指を俺の唇に当て、言葉を止められた。 「大丈夫、もうわかってるから。だから少し聞いてくれるか?」 「ん…っ、」 涙を流しながら見上げると、ソウは哀しそうに笑っていて…、胸がキュウと痛くなる。 「助けを求めることは、決して悪いことじゃない。頼った先に解決策があるかもしれねぇ。」 「……っ、」 「だから、限界だったら我慢せず、お前の心の内を叫んだっていいんだよ。」 「…ッソウ…っ、」 「…例えそれが、今じゃなくても。」 そう言うと、最後に俺の涙を拭き取って、ソウは帰って行った。 守るって決めた。 幸せになってほしいって心から願ってる。 「明日が終われば、きっと…っ、きっと何かが変わる…っ!」 明日さえ、終われば。 「た、ただいま…。」 「ナオ?おかえり。遅かったわねー。」 ひょっこり、リビングから顔を出して微笑む母さん。今そんな顔見たら余計に泣いてしまいそう。 「俺、今日食べてきたからご飯はいいやっ!お風呂入ったらもう寝るよ!」 「…?そう?わかったわ。」 俯きながら足早で風呂場へ向かい、鍵を閉める。 「…本当に、明日が終われば何か、変わるのかな…?」 服を脱いで、全身を見つめて呟いた。 傷と痣が酷い、醜い体。 新たに刻まれた火傷の跡と、殴られた跡。 「き、たねぇ…っ!」 明日、俺は本当に汚くなる。 「…っくそ…!」 顔を歪ませ、その場に蹲った。 …この時の俺はまだ気付いていない。自分のスマホが無くなっている事に。

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