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Page80:ゆって!

なんで俺とシュンくんは、兄弟になってしまったんだろう。 なんでシュンくんはずっと前から俺のことを知っていたのに、俺は今シュンくんを知るんだろう。 「っう…、ふぇ…、ひッ、く…っ、」 なんで俺は、こんなにもシュンくんのことを好きになってしまったんだろう…。 「ナオくんってば…、そんなに泣いたら目が腫れちゃうよ。」 好きなのに。 「ほら、涙拭いて…。」 大好きなのに。シュンくんが…。 「…すき…っ、」 暗闇の中で響いた、嗚咽交じりの言葉。 「…っごめ、おれ、やっぱり、どうしてもシュンくんと普通の兄弟になんて、なりたくない…!」 だめってわかっていても、好きなもんは好きで。 「他の人に、とられたくない…っ!」 嫌なもんは嫌なんだ。 「おれ以外、すきになっちゃ、やだぁっ!」 わああ、と再びシュンくんの胸に顔を埋めた。 「…ナオくん。」 「ひ、ぅう…っ、やだ、やだっ、きょうだい、戻るの、やだぁ…っ!」 「ナオくん。」 「すきだもんーっ!やだーっ!」 駄々をこねる。 ただひさすら、イヤイヤと首を振る。 「しゅんく、は…、おれのだもん…っ!」 俺のじゃない俺のものへの、人一倍多い独占欲。 「すきって、ゆってよぉ…!」 あと、どれくらいの"好き"があれば…、俺の想いを受け入れてくれる…? 「すきって…っ、」 「…ナオくんが、好きだよ。」 ふわりと優しい温度と匂いに包まれ、ちゅっと頭にキスを落とされた。 「ナオくんが僕を知らない時から、ずっと、ずっと…、大好きだ。」 「……っ、」 言って欲しかった言葉に、俺は声にならないくらい泣いた。 「っひ、ぅ…っ、ほ、んとにぃ…っ?」 「本当だよ。何年片思いしてたと思ってんの。」 「うぇえ…っ、しゅんく…おれのこと、すきってぇ…っ!」 「うん、すき。」 「なのにっ、兄弟に戻るって言った…っ!」 「だって、ナオくんはソウが好きなんだと思ったんだもん。」 「ちがうよぉっ!なんで、そうなるのぉっ!」 「…いっつも、ソウのところにいっちゃうもん。僕の手を離してさー。」 背を向けたのも、離れていったのも、全部シュンくんだと思っていたけど。 「…僕だって、寂しかったんだからね。」 きっと俺もシュンくんにやっていたんだ。 「っぅあぁッ、ごめんなさいぃぃ…!」 「あ、いや、別にもういいんだけどさ。」 「おれのこと、きらいにならないでぇっ!」 「ならないよ、やっと手に入ったもん。」 嬉しさやら悔しさやらが複雑に入り混じった涙が、止めどなく俺の瞳から流れていく。 そんな俺をシュンくんは優しくあやした。 「ねえ、もう泣かないで、こっち向いて。」

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