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Page87:今日のチッスはブドウ味
「…ん?」
ガチャ…と音を立てながら、ほんの数センチ開けてみると、丁度開けた先に小さな袋が落ちていた。
なんだこれ…?と、その袋を拾った時。
「やっと、開けてくれたね。」
「っ!?」
シュンくんの声が聞こえてすぐ、バンッ!と音を立て、数センチしか開いてなかった扉が全開した。
「ほら、ナオくん。もう出ておいで。」
「な…っ、お、俺のこと、嵌めたな…!?」
「わかってたでしょ?」
「…っ、」
図星をつかれ、言い返すことができない。
「でも、気になっちゃったんだよね〜?何の音なんだろう〜って。」
「…飴。」
「そう、飴!ナオくんにあげる。」
手のひらにある袋の正体は、ただの飴。
これを手でガサガサ鳴らして、ここに置いておいたんだ。
「…いや、飴って!」
「好きでしょ?シュワシュワするやつ。」
「好きだけど!飴って!!」
俺めっちゃ馬鹿じゃん!?たかが飴一つに釣られて!
でもしょうがないじゃん!?気になったんだもん!
「ほらほら、そんな落ち込まないで。」
「あっ?…あっ!俺の飴!」
しゃがみ込む俺の手からひょいっと飴を取り、何の躊躇いもなく開けたかと思えば、ぱくっとシュンくんの口に放り込まれる。
「なっ、なんで食うの!?俺にくれたじゃん!俺のなのに…っえ、なに…っンンッ!?」
シュンくんはギャーギャー騒ぐ俺の顔を掴むと、少し口角を上げてキスしてきた。
「ん、ぅっ!?ふ、ぁ、ンン…っ!」
途端、口の中にシュワーと広がるブドウの味と、コロンと移される小さな球体。
「ん…っは、」
移し終えると、シュンくんはスッと俺から離れていった。
「どう?美味しい?」
「な…っ、な……。」
「ふふっ、顔真っ赤で可愛い。…よし!早くリビング行こ!」
「〜〜ッ無理!!」
口移しで飴を俺に食べさせたシュンくんは、満足気な顔をしてリビングへ行き、残された俺は飴がなくなるまでそこから動けなかった。
「ナオくん、ナオくん、ちょっと来て。」
シュンくんに遊ばれてから数時間が経った頃、シュンくんがリビングの入り口から俺を手招きする。
今度は何をする気だ?と警戒すると、「お客さん来てる」と教えてくれた。
「お客さんって、誰………。」
シュンくんについて行き、玄関を開けて思わず目を見開いた。
「…ッソウ…!!」
家の門にもたれ掛かる、あの後ろ姿は紛れもなくソウで…。
「はっ!?ナオ…!?」
俺は靴も履かないでソウの元に駆け寄り、ガバッと抱き付いた。
「ソウ!なんでここにいんの!?ソウー!!」
来るなら連絡しろよ!と言いながらぐりぐり頭を押し付けてやる。
「なんでって、シュンが…っ!いてっ!ちょ、落ち着け…!」
「………。」
俺はソウの言葉でピタッと止まり、スッと離れた。
「っ?…ナオ…?」
心配そうなソウの顔。…だが、思い出したのだ後ろにシュンくんがいることを…。
「えっと、これは、その…。」
もにょもにょ喋りながら、恐る恐る振り向く。
でもそこには、悪魔のような笑顔も黒いオーラも出ていない、優しい顔したシュンくんがいた。
「いいよ、抱き付いても。僕が呼んだんだ、ソウの事。」
「え…?シュンくんが…?」
「ナオくんが会いたがってると思ってさ。それをソウにもわかってほしくて。」
ん?ソウにも、わかってほしい…?
「え、なんで…?」
「ナオくんの事僕に教えたから、嫌われたって思い込んでるみたいだよ。」
困ったように笑うシュンくんの言葉を聞いてバッと振り返ると、ソウはバツが悪そうな表情をし、俺から目を逸らしていた。
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