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Page89:cuteなエプロン
「ナオくーん、ハンバーグの下ごしらえ出来たよー!」
「………。」
「唐揚げはどんな感じー?」
料理担当は、ハンバーグはシュンくん、唐揚げは俺。
「…もう少し。」
ボソッと返事をすると、シュンくんはため息をついた。
「もー、さっきまでのやる気はどうしたの?元気ないなぁ?」
「当たり前だろッ!?」
くわっと目を見開き、シュンくんを見る俺が着ているのは、フリル付きピンクエプロン。
「こんな格好でやる気が出るわけない!」
「えー?超かわいいじゃん、似合ってる♡」
「嬉しくねぇ!!」
なのにシュンくんはネイビーのシンプルなエプロン…。普通にかっこいいし、似合ってる。
…なんで!?なんで俺もそっち買ってきてくれなかったの!?なんでコレ!?
「くっそぉ!こんな格好、絶対母さんに見られたくな…」
「ナオ?シュンくん?なんか作ってる、の…。」
「っ!?」
そんな俺の願いも虚しく、言ってる側からキッチンに顔を出した母さんに見られた。
「ッキャー!ナオかわいいー!!」
「っう、うるせぇ!かわいくねぇわい!」
俺を見るなりキャーキャー騒ぎ立てる母さんに、思わず顔が熱くなって、「見るな!」と必死で隠しようがないエプロンを隠そうとする。
「写真撮っていい!?シュンくんも一緒に!」
「やっ、やめろぉ!」
「こんな感じでいいですか?」
「ちょっ!シュンくん!?」
嫌がる俺を無視して、シュンくんはさり気なく俺の腰にスッと手を回し横に立った。
「グッジョブ!はいチーズ!」
口早に言ってすぐ、テローンと写真を撮る音。
「撮るの早いな!?」
俺が逃げるのを予想してか、母さんの行動は驚くほど早かった。
「二人とも可愛く撮れてるわ〜!京介さんに送らなきゃ♡」
「あ!僕にも送ってください!」
「送るなぁぁあ!!」
後に、このツーショットが京介さんと母さんとシュンくんの待ち受け画面になることを、俺はまだ知らない…。
「わぁ、すごい!いい匂い〜!」
「美味しそうだ。」
京介さんが帰ってきたところで夜ご飯にした。
ホカホカの白飯、卵スープ、ハンバーグ、唐揚げ、サラダ。
自分で言うのもなんだけど、素晴らしい出来だと思う。
「ん〜!ハンバーグ、柔らかくておいしいー!」
「唐揚げも、すごく美味しいよ。」
母さんと京介さんは、とても喜んで料理を食べてくれた。
「本当に美味しい…、ナオくん、唐揚げの味付けってなに?」
シュンくんも、唐揚げが気に入ったみたいで素直に嬉しい。
「特に変わったものは入れてないけど、今日は梅肉を入れてみたよ!」
「へぇ、梅肉…だから酸味があるんだね!すごく美味しいよ。」
「えへへ、ありがとう〜。」
笑い声が響く賑やかな食卓。こんなに楽しい夕食は生まれて初めてだ。
「ごちそうさまでした!二人共、今日はありがとね、とっても美味しかったわ。」
「息子二人の手料理が食べれるなんて、幸せ者だな。」
「ええ、本当に。」
俺とシュンくんはアイコンタクトをして、幸せに浸る二人にもう一つのサプライズ。
「じゃーん!」
冷蔵庫で冷やしておいたケーキを、テーブルのど真ん中に置く。もちろん手作りで、これは二人で作った。
プレートには『Happy Anniversary』と書いてあり、それを見た二人は、驚きの表情を浮かべたままピタリと固まった。
「今日、二人の記念日なんでしょ?」
「これは僕たちからのお祝いだよ。」
そして、俺とシュンくんは一瞬お互いを見て微笑み、視線を二人に戻す。
「「父さん、母さん。五年目の記念日、おめでとう!」」
そう言うと、母さんの瞳から、ぽろっと涙が溢れた。
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