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Page91:チョロ坊や

「だからさ、ナオくん。そんなに重く考えないで、もっと気楽にいこう。」 ね?と優しい声で問いかけるシュンくんに、心が少しだけ軽くなった気がした。 もちろん、俺たちが選んだ道は、そんな簡単に行けるものではないのは重々承知だ。 けど、押し潰されて迷走してしまうくらいなら、いっそ少しでも楽な方へ。 「気持ちなんて他人に言われて変わるものでもないしさ。バレた時、一緒に対処していこう?大丈夫、僕がちゃんと守るから。」 「うんっ、」 抱き締めるシュンくんの腕に力が入り、俺もそれに応えるかのように抱き締め返す。 「出て行けって、顔も見たくないって言われるかもしれない、気持ち悪いって蔑まされるかもしれない…、でも、どんなに辛くても、ナオくんと一緒にいることを選んで、この先も生きていく。」 「シュンく…、」 「好きだよ、ナオくん。」 ちゅ…と小さなリップ音と共に、額に柔なくて温かいものが一瞬触れた。 それがキスだと理解した時、暗闇で良かったと思った。 「俺も、好き…。」 だってきっと今、俺の顔は真っ赤になってにやけてる。さっきはあんなに不安でいっぱいだったのに。 シュンくんから伝わる"好き"。 俺から溢れる"好き"。 その二つの"好き"は、きっとお互いが思ってるよりも遥かに大きくて重たいもの。 「シュンくん…。」 「ん?」 「…俺を、俊くんのものにして…。」 その全てを受け止めて、支え合いたい。 「…あっ、ん…っ、」 暗闇に、甘い吐息が混じり合う。シュンくんに着ていたTシャツを脱がされ、首、鎖骨、胸にちゅっちゅっとキスを落とされる。 「ん、しゅんく、も…脱いで…、」 自分だけ脱がされるのはずるいと訴えると、シュンくんは少し笑ってTシャツを脱いでくれた。 「これでいい?」 「う、ん…。」 「でもさ、これじゃあ見えなくない?」 ちょっと電気つけるね、とリモコンに手を伸ばし、俺は急いでその手を掴む。 「やだっ!つけちゃやだ!」 「なんで?暗いとやりにくいよ。」 「でも、やだ…っ!明るいのは、はっ、はずかしい…から…。」 掴む手に力を込めると、俺の気持ちが伝わったかのように、シュンくんはよしよしと頭を撫でた。 「…わかったよ。」 「!ありが…」 「豆電で我慢する。」 その言葉と共にピッとボタンが押され、暗闇だった部屋に小さな明かりが灯り、シュンくんと目が合う。 「いや、わかってへんがな!」 「大丈夫、薄暗いからそんなにわかんない。」 「そういう問題ちゃうがな!」 「…ナオくん、今朝も一緒にしたじゃん。」 「うっ、いや、そうだけど…っ!」 なんか恥ずかしいじゃんっ!だって今からヤッちゃうんだよ!?今朝のそれとは訳が違う…!こんなの、少しの明かりだって…。 「奈央の全部、僕にみせて。」 「…っ、ま、豆電なら、いいよ…、もうっ!」 耳元で、しかも呼び捨てはずるいっ! 「あはは、ありがとう。」 自分ってチョロいな、なんて思いながら目を瞑ってシュンくんのキスを受け入れた。

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