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Page102:おにゃのこの家
「ねーねー、シュンくん。」
「んー?」
勉強机の横からひょこっと顔を出してシュンくんに声をかける。
さっきまでソファーベッドで漫画を読んでいたが、勉強するシュンくんの後ろ姿を見たら胸がキュンとなった。
「あのさーあのさー、ずっと気になってたんだけどさー。」
「うん。」
「泊まりに行ってた友達の家って、やっぱり女の子の家だったりする…?」
カリカリと文字を書いていた手がピタッと止まり、シュンくんがチラリと俺に視線を向ける。
「気になる?」
「…気になる…。」
俺の質問に、ニヤリと怪しい笑顔が返ってきたが、ここは素直に聞いておきたい。
実は結構気になってたし、前に言ってた「汗かくこと」だって…。
「誰の家、行ってたの…。」
女の子じゃない名前を言って。
「女の子の家…?」
お願い、違うって言って…。
「んー、女の子の家と言えば女の子の家かな。」
「え…。」
俺の願いも虚しく、平然と、言って欲しくなかった言葉を言われた。
「他にも人いたから、二人きりとかではないけどね。」
「………。」
「まぁ、何を隠そう泊まり先は…」
「もういい。」
「え?ちょ、ナオくん!?」
俺はシュンくんの言葉を遮り、逃げるように部屋を後にする。
なんだよ、俺のこと、ずっと好きだったって言ったくせに…。
「ナオくん?入るよ?」
自分の部屋に戻って、ベッドに寝転がりながらチョコのクッションをぎゅうと抱き締めていると、トントンとノックが聞こえた後、シュンくんが部屋に入ってきた。
「ナオくん、怒ってる?」
「………。」
俺の元へ近付いて来る足音に、クッションを抱き締める腕に力が入る。
「ナオくん…。」
ギシッとベッドが軋み、シュンくんが腰かけたことを知らせる。俺の背後に感じるシュンくんの気配。
「ナオくん、ごめん。」
「………。」
「意地悪した…、ごめんね。」
「………。」
「こっち、向いてくれないかな…?」
「………。」
うんともすんとも言わず、ピクリとだって動かない。
だって、俺は怒ってるもん。…真剣だったのに、意地悪ってなんだよ。
「ナオくん…。」
「…女の子の家って言った。」
「それは…、」
「ずっと前から好きだったって言ったのに。」
「だから、」
「汗かくこと、したんでしょ!」
怒りと悲しみを含んだ声が、静かな部屋に響いた。
「…ナオくん。」
スッとシュンくんの手が伸びてきて、クッションから離される。そのまま仰向けにされ、歪んだ視界に映ったシュンくんの顔。
「俺を好きって、言ったのに…。」
「うん、好きだよ。」
「うそだ…。」
「本当。」
にこっと微笑み、俺の涙を拭った。
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