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Page121:神様仏様シュン様
『お前がナオくんを責めて泣かせるのか?好きって言えなかった、お前が!』
「…っ、べ、別にもう関係ねぇし!」
前にショッピングモールで会った時の会話を思い出し、慌てて寝返りを打つ。
好きとか言われても困るし。俺は嫌いだし。…でも…。
『ナオ!』
『ナオ。』
二人の笑った顔が思い浮かんで、消えない。
「〜〜っ、次っ、またどっかで会えたら、ちゃんと話するっ!言いたい事、言うっ!もちろん、シュンくんも一緒に!」
いつになるかわからないけど、いつか!
「なに一人で喋ってるの?ナオくん。」
「あっ!シュンくん!」
丁度独り言を言い終わった時、シュンくんが部屋に入って来て、俺は体を起こした。
シュンくんがクスクス笑いながらベッド脇に座り「どうしたの?」と聞いてくる。
「…夢見た。」
「夢?」
「ん。…ハルとナツの。」
それで過去を少し思い出してた、と正直に話した。
なんとなく、怒ってるかな?と思って、チラッとシュンくんを見ると、それを察したシュンくんが俺の頭を撫でる。
「…そう。ナオくんは、あの二人に会いたいの?」
「え…。」
「さっき独り言言ってたでしょ。」
「あぁ、えーっと、会いたいっていうか…、もし会ったら今度は逃げずにちゃんと話そうかなって…思って…。」
変なことされるのは、もうごめんだけど。でも、シュンくんと一緒なら頑張れる気がする。
「そっか。」
「…シュンくん、怒ってないの…?」
あんな事があったのに、ちゃんと話したいなんて…シュンくん的に賛成はしなさそう…。
「怒ってないよ。だってナオくん、あの二人と友達に戻りたいんでしょ?」
「え…?」
予想外の言葉に、俺は口を少し開けたままシュンくんを見た。
友達に戻りたいと思ってる…?俺が…?
「ずっと友達だったもんね。楽しかった思い出が消えない限り、全部嫌いになんてなれないよ。」
「………。」
「…ナオくん自身、卒業してからずっと考えないようにしてたんじゃない?でも、再開して、無意識に考えるようになって、夢にまで見て…。」
「……っ、」
「ふふっ、寂しがり屋のナオくんにとって、あいつらは数少ない友達だったもんね。」
「…っひ、一言余計だし…っ!」
シュンくんに言われて、心のモヤモヤが消えた気がした。
ずっと、しまいこんでた。もう戻れないと思ってたから…。
「まぁ、僕はあまり気が進まないけど、ナオくんもちゃんと危機感あるみたいだし?僕も一緒なら話くらい許すよ。」
でも、卒業した日から今までずっと、俺は逃げてただけだったんだ。
ちゃんと話をして、お互いが許し合った時、きっとまた友達に戻れる。
「うん…っ、ありがとうっ!」
にこっと微笑んで、シュンくんは俺の涙を拭いてくれた。
「って言っても、今度いつ会うかわかんないけどねー。二人揃ってるとも限らないし。」
「世間は狭いから、どうせすぐ会えるんじゃないの?…多分。」
「数年後とかだったら、どうする?」
「…時効になりそう。」
「ふふっ、それはそれで僕はアリだと思うな。」
笑うシュンくんに釣られて、俺も笑った。
「そういえば、シュンくんに色々聞きたいんだけど…。」
過去を振り返って思った、シュンくんのたくさんの謎。
「ん?なに?」
「あのさ、シュンくんって俺の事知ってたんだよね?」
「うん、知ってたよ。」
「ナツとハルと、その…色々あったのも知ってて…、俺を助けてくれてたんだよね…?」
「うん、まぁ、そうだね。」
「…毎回だったよね、助けてくれてたの…。クラスも違ったのに…。」
助けてくれたことは、本当に感謝してもしたりない…けど余りに謎すぎて地味についていけてなかったのも、事実。
もしかして、シュンくんって…。
「…ナオくん、僕の事、ストーカーとか思ってない?」
「え、違うの?」
「違うよ。てかクラスが違う僕が一人で、毎回ナオくんを助けに行けるわけないでしょ!」
「え?」
「ナオくんのクラスにいた、緒方って人覚えてない?」
「おがた?」
名前を聞いて思い出そうとするが、顔が出てこない。
「まぁ、覚えてないならそれでもいいんだけど、その緒方がナオくんたちがいなくなった時、僕にメッセージくれてたんだよ。流石に場所まではわからないから、見つけるまでに時間かかったけどね。」
いつも助けるの遅くなってゴメンね、と困ったようにシュンくんは笑う。
「シュン様…!」
そんな笑顔も、俺にはとても輝いて見えた。
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