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『三人、どっか行った』 「はぁ…、またか。」 休み時間、緒方からメッセージが来ると、僕は廊下で賑わう生徒をかき分け探す。 「この前は校舎裏だったよな…。今度はどこで…。」 一年からサボり常習犯だった僕は、ある程度校内の人気のない場所を知っているつもりだし、現にナオくんたちを見つけてきた。 だが候補がいくつあっても、今いる場所をピタリと当てることはほぼ無理に近い。だから思い当たる場所を虱潰しに探すしかなかった。 「おい、シュン。今日学校から電話があって…、」 「あぁ、ごめん父さん。落ちた成績、すぐ上げるから。」 普段からサボり癖があったけど、成績は中間の所をキープしていた。 だが、最近休み時間はほぼナオくん探し。たまに授業を抜けて、探しに行ったりもしているため、成績は見るからに落ちていた。 そしてついに保護者へ連絡となれば、僕だって少しは真面目にやるさ。 「…なんだ、反抗期はもう終わったのか?」 「ふふっ、おかげさまで。」 金だった髪は黒に、そして勉強机に向かう僕を見て驚いた様子の父さん。 あのまま落ちぶれていっても構わないと思っていたけど、やるべき事が出来たからね。 「…そうか、よかった。」 グレる前に戻った僕に、今度は安心した表情を見せフッと笑う。 「ねえ、父さん。」 「ん?なんだ?」 「今度、麻衣子さんに会わせてほしいんだけど。」 「え…?」 「結婚、するんでしょ?なら挨拶しておかなきゃ。」 ニコッと笑う僕に、父さんは再び驚きの表情を見せた。 **** 「初めまして、早川俊です。父がいつもお世話になってます。」 「初めまして、佐伯麻衣子です。…ふふ、本当に素敵な息子さんね。」 「いえ、そんなこと…。」 今日初めて、父の再婚相手、麻衣子さんと会った。優しく微笑む彼女は、どこかナオくんに似ていて。 「会えて、とても嬉しいわ。」 でもなんだかとても小さく、消えてしまいそうな雰囲気があって…父さんが、この人を選んだ気持ちがわかった気がした。 「…でも再婚の話を聞いて、混乱したんじゃないかしら?見ず知らずの他人が母親になるなんて嫌よね。驚かせてしまって、ごめ…」 「麻衣子さん。今日、このような場が設けられたのは、僕が貴女に"会いたい"と言ったからなんですよ。」 申し訳なさそうに頭を下げ、謝ろうとした彼女の言葉を遮った。 「え…?」 「そりゃあ、最初は驚いたし反対だったし…貴女に対して酷い事を言って、父さんに殴られました。」 他人を受け入れる余裕がなくて、周りに八つ当たりしていたあの頃。 人と繋がる一歩を踏み出せたのは、紛れもなくナオくんのお陰だ。 「だから今日は貴女に謝るために、そして今後も父さんのことをよろしくお願いしますと言うために、ここに来たんです。」 「…っ、」 「謝るのは僕の方だ…、貴女を誤解して酷い事を言って、ごめんなさい。」 ペコリと頭を下げると、啜り泣く声が聞こえた。麻衣子さんを見ると、口元に手を当て、涙を流していた。 彼女の涙は、とても綺麗で…。 「…父さんには、貴女が必要です。そして、僕にも。」 「ありがとう…っ、シュンくん…。」 ナオくんと重なって見えた彼女も、僕は守ってあげたいと思ったんだ。 「…あ、できればナオくんには僕のこと内緒にしてもらっていいですか?会った時のサプライズにしたいので!」 あと一年、僕の存在を隠し通せれば、ナオくんを守り切る事ができる。

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