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『三人、どっか行った』
「はぁ…、またか。」
休み時間、緒方からメッセージが来ると、僕は廊下で賑わう生徒をかき分け探す。
「この前は校舎裏だったよな…。今度はどこで…。」
一年からサボり常習犯だった僕は、ある程度校内の人気のない場所を知っているつもりだし、現にナオくんたちを見つけてきた。
だが候補がいくつあっても、今いる場所をピタリと当てることはほぼ無理に近い。だから思い当たる場所を虱潰しに探すしかなかった。
「おい、シュン。今日学校から電話があって…、」
「あぁ、ごめん父さん。落ちた成績、すぐ上げるから。」
普段からサボり癖があったけど、成績は中間の所をキープしていた。
だが、最近休み時間はほぼナオくん探し。たまに授業を抜けて、探しに行ったりもしているため、成績は見るからに落ちていた。
そしてついに保護者へ連絡となれば、僕だって少しは真面目にやるさ。
「…なんだ、反抗期はもう終わったのか?」
「ふふっ、おかげさまで。」
金だった髪は黒に、そして勉強机に向かう僕を見て驚いた様子の父さん。
あのまま落ちぶれていっても構わないと思っていたけど、やるべき事が出来たからね。
「…そうか、よかった。」
グレる前に戻った僕に、今度は安心した表情を見せフッと笑う。
「ねえ、父さん。」
「ん?なんだ?」
「今度、麻衣子さんに会わせてほしいんだけど。」
「え…?」
「結婚、するんでしょ?なら挨拶しておかなきゃ。」
ニコッと笑う僕に、父さんは再び驚きの表情を見せた。
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「初めまして、早川俊です。父がいつもお世話になってます。」
「初めまして、佐伯麻衣子です。…ふふ、本当に素敵な息子さんね。」
「いえ、そんなこと…。」
今日初めて、父の再婚相手、麻衣子さんと会った。優しく微笑む彼女は、どこかナオくんに似ていて。
「会えて、とても嬉しいわ。」
でもなんだかとても小さく、消えてしまいそうな雰囲気があって…父さんが、この人を選んだ気持ちがわかった気がした。
「…でも再婚の話を聞いて、混乱したんじゃないかしら?見ず知らずの他人が母親になるなんて嫌よね。驚かせてしまって、ごめ…」
「麻衣子さん。今日、このような場が設けられたのは、僕が貴女に"会いたい"と言ったからなんですよ。」
申し訳なさそうに頭を下げ、謝ろうとした彼女の言葉を遮った。
「え…?」
「そりゃあ、最初は驚いたし反対だったし…貴女に対して酷い事を言って、父さんに殴られました。」
他人を受け入れる余裕がなくて、周りに八つ当たりしていたあの頃。
人と繋がる一歩を踏み出せたのは、紛れもなくナオくんのお陰だ。
「だから今日は貴女に謝るために、そして今後も父さんのことをよろしくお願いしますと言うために、ここに来たんです。」
「…っ、」
「謝るのは僕の方だ…、貴女を誤解して酷い事を言って、ごめんなさい。」
ペコリと頭を下げると、啜り泣く声が聞こえた。麻衣子さんを見ると、口元に手を当て、涙を流していた。
彼女の涙は、とても綺麗で…。
「…父さんには、貴女が必要です。そして、僕にも。」
「ありがとう…っ、シュンくん…。」
ナオくんと重なって見えた彼女も、僕は守ってあげたいと思ったんだ。
「…あ、できればナオくんには僕のこと内緒にしてもらっていいですか?会った時のサプライズにしたいので!」
あと一年、僕の存在を隠し通せれば、ナオくんを守り切る事ができる。
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