132 / 146
Page132:エンダァァァイヤァァァ
「…っう、」
視界が涙で歪んでいく。
こんなにも想われて、嬉しくないはずがない。
「あと…、」
「んっ?」
嬉しさと感動に浸っていたら、シュンくんが何かを言いかけた。
まだ続きがあるみたいで、何やら紙袋をガサガサと漁っている。
「はい。」
「へ…っ?」
俺の目の前に出したのは、薔薇のブーケだった。
「予約…の、続き?みたいな…。」
「え…?」
「こんなこと言うの、本当にカッコ悪いんだけど……、僕、余裕ないんだ…。」
シュンくんはカァと顔を赤くしながら、少しだけ俯く。
俺は、そんなシュンくんを見ながら、ブーケを持って固まっていた。
「ナオくんのこと、誰かにとられるんじゃないかって…そう思っただけで、怖くてさ…。本当に、ここまで人を好きになったことなんて、なかったから…。」
「……っ、」
今まで聞いたことがなかったシュンくんの心の内側に、言葉が出てこない。
優しい笑顔の裏では、不安と隣り合わせだったんだ。
「僕たちの恋は、決して平らな道ではないと思う…けど、これから先、ナオくん以上に好きになれる人なんて絶対にいないから…。僕はこの恋に、僕の一生を捧げるよ。」
「…っふ、ぅぇ…っ、」
「だからもし、ナオくんが僕と一緒にこの道を選んでくれるなら…、」
「選ぶよっ!選ぶに決まってる…っ!!」
俺の隣はシュンくん以外あり得ないし、シュンくんの隣も俺じゃなきゃやだ。
シュンくんがこの恋に一生を捧げるなら、俺もこの恋に一生を捧げたい。
「ふふっ、ありがとう。…ね、そのブーケを包んでるレース、取ってみて?」
「……?」
シュンくんに言われた通り、ブーケを包んでいた白いレース取ってみると、思ったよりも大きくて、ふわふわと風になびく。
よく見てみると、チュール生地の周りにレースが施されていて、それはまるで…。
「貸して?」
シュンくんに言われて渡すと、俺の頭にそれをかけた。
「こ、れって…、」
「ふふっ、花嫁さんみたいだ。」
ブーケを手に、ベールをつけてる俺の姿を見て、シュンくんは嬉しそうに微笑む。
「小さな結婚式みたい…。」
「そうだね。…綺麗だよ、ナオくん。」
側から見たら真似事のようかもしれないけど、今の俺たちからしたら、この小さな結婚式はとても大きな意味を持つ、人生の中で最も重要な出来事の一つ。
「今はまだ無理だけど、いつか必ず本物の指輪を持って、ナオくんを迎えに行く。」
「うんっ、うん…っ!」
「…さぁ、もう泣かないで。」
嬉しくて、ずっと泣いていた俺の涙を優しく拭き取った後、その手は頬を撫でる。
そこから伝わる心地いい温度に俺もスリ…とすり寄せた。
このまま、時が止まってしまえばいいのに…。
「ナオくん、愛してるよ。」
「…っおれも、愛してる…っ!」
夕日をバックに、お互いの首元でリングを光らせながら、俺たちの影が重なった。
ともだちにシェアしよう!