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Page133:【ご報告】
帰りの電車で、シュンくんが紙袋に入ったブーケの花を指差して、花言葉を教えてくれた。
『薔薇の花言葉は、ナオくんも知ってるよね?本数によって意味も変わってくるんだけど、基本的に"あなたを愛しています"っていう意味が込められていて…。』
『うんうん!』
『この葉っぱはアイビー。花言葉は"永遠の愛"、"結婚"。…なんて、必死すぎかな?』
照れ臭そうに笑う昨日のシュンくんを思い出して、愛しさが込み上げる。
言葉に表せないくらい、俺は浮かれていた。
「うへへ〜っ!」
だってシュンくんと、海で二人っきりの小さな結婚式あげちゃったんだもん〜!ペアリングももらっちゃったし!
「…ほんとだ、"Shun"って彫ってある…。」
ベッドで横になりながら、もらったリングの内側を見る。
シュンくんの名前が彫ってある、たったそれだけのことなのに、いつも近くにいるように感じて嬉しくなった。
「シュンくん、そろそろ学校から帰ってくるかなぁ。…あー、まだ少し先だけど緊張する。」
その反面、俺は緊張で痛む胃を押さえる。
…本当に愛おしくて、大切な人とずっと一緒にいるために、俺たちはある決断をした。
****
「父さん、母さん…、僕たちから大事な話があるんだ。」
「………。」
「え、どうしたの、二人とも…スーツなんか着て…。」
小さな結婚式を挙げた翌週末、母さんと父さんが休みの日に俺たちはスーツを身に纏って、二人の前に立った。
どうしても伝えなければならないことを…伝えるために。
「あ、あの…えっと………。」
とは言ったものの、シュンくんは言葉を詰まらせ、俺なんか声すら出せずにいた。
やばいほど鳴ってる心臓が、このまま口から出てくるんじゃないかってくらい緊張して冷や汗が止まらない。
「そ、の……。」
「…とりあえず、座りなさい。話があるんだろう?」
顔を強張らせながら立ち尽くす俺たちを見た父さんが、優しく声をかける。
「…うん。」
その言葉に、心臓をギュッと締め付けていた何かが少し緩んだ気がして、俺は一度深呼吸をした後、シュンくんと一緒に母さんと父さんの向かいの席に座った。
…話というのは、他でもない。俺たちの関係のことだ。
ずっと考えていた。この事を、二人に言うべきかどうか。
言わなければ、これから先も笑い合って何気ない幸せな日々を過ごすんだろう。
シュンくんが大学を卒業した時にでも一緒に家を出て、二人で暮らしたりして…みんな傷付かないし、泣くこともない。
でも、何も知らない二人は…何も言えなかった俺たちは…果たして、それが本当に幸せなんだろうか?
孫の顔が見たいかもしれない。俺たちが連れてくる未来のお嫁さんを楽しみにしてるかもしれない。…そんな、きっと永遠に来ない未来をずっと待ち続ける母さんたちは、幸せなのか?
言えずに、時を刻む毎に後悔を募らせ、知らないところで母さんたちを傷付ける俺たちは、本当に…。
「…驚かないでっていう方が、きっと無理だと思うけど……、実は、僕たち………付き合ってるんだ。」
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