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Page136:ホトトギス
それから父さんは「困った時は必ず頼れ」と言って俺たちから離れた。
母さんは、その光景を微笑みながら見ていて…。
「…シュンくん、泣いてる。」
「ナオくんこそ…。」
俺たちも、嬉しさと安堵で張り詰めていた気が抜け、笑い合った。
こんな幸せな未来が待ってるなら、一生に一度の告白も、悪くないかもしれない。
母さんと父さんが、俺たちの親で本当に良かった。
「俺、母さんが叫んだ時、マジで怒られるかと思った。」
「僕も、どんな罵声が飛んでくるかと…。」
だけど母さんが怒った内容は、俺たちの背中を押すためのものだった。
これから先、辛いことがあった時…きっとその言葉に救われるんだ。
「あら、私は薄々気付いてたわよ?二人のこと。」
「「えっ!?」」
思い出して浸っていたら、またまた予想外な言葉に二人してバッと母さんを見る。
でも母さんはいつもの笑顔で笑うだけだった。
「きっと女の勘ってやつね〜!京介さんは全然気付いてなかったけど!」
「いや、わかるわけないだろう…、お陰で目が飛び出しそうになるくらい驚いたんだぞ…。」
「可愛い息子が二人して恋人作っちゃって寂しいわねー?」
「…フン、別に寂しくなんかないさ。俺には麻衣子さんがいるからね。」
「ふふっ、涙の跡、残ってますよ。」
母さんがティッシュで目元を拭き取ると、少し恥ずかしそうにしながら「ありがとう」と呟く父さん。
いつも以上に家族の雰囲気が穏やかになって、打ち明ける前よりも、四人の心の距離が近付いたような気がした。
「ダァーッ!疲れたっ!」
部屋に戻り、ネクタイを緩め、シワにならないようスーツをハンガーにかけた。
すぐに部屋着姿になった俺は、隣のシュンくんの部屋に向かう。
「シュンくーん?」
「ん?」
「おっ、シュンくんの腹ちら!」
扉を開けると、丁度ティーシャツを着たところで、いい感じに鍛えられた腹筋がチラリと見えた。
するとシュンくんが、ニコニコしながら歩いてきて俺の目の前で止まる。
「?シュンく…っぅわ!なに…!」
突然、服をペロっとめくられ、思わず一歩下がった。
「ナオくんの腹ちら〜。」
「お、俺はダメ!鍛えてないから!」
バッ!とお腹を隠すように腕で覆うと、シュンくんは笑いながら、ソファーベッドの脇に刺さってる充電器に携帯を挿す。
「…ねーシュンくんはさー、もう俺と一緒の部屋は嫌なのー。」
最近は一緒に寝たりするけど、やっぱり別々の部屋だと…。
「…寂しい?」
「うん…。」
シュンくんが勉強で部屋に篭る時、俺は部屋に入らない。邪魔したくないってのも、もちろんあるけど、どうしてもそこはシュンくんの場所になるから…,。
でも、同じ部屋だったら…自然に同じ空間にいれる。俺は、少しでもシュンくんと一緒にいたいよ。
「そっか…。でも、やっぱり部屋はこのままでもいいかな?」
「え…。」
困ったように小さく笑いながら、そう言われた。
「あ、別にナオくんと一緒が嫌ってわけじゃ…」
「あっ、うん、わかってるよ!わがまま言ってごめん!なんか雰囲気に流された!ハハッ、忘れて!」
そんな顔、しないでよ。
「ナオく…」
「いやほんと、寂しいとかじゃないから!てか寂しいって何だって感じ!?同じ家に住んでるっつーの!アハハッ!」
俺、ほんと…ダメになったなぁ。
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