136 / 146

Page136:ホトトギス

それから父さんは「困った時は必ず頼れ」と言って俺たちから離れた。 母さんは、その光景を微笑みながら見ていて…。 「…シュンくん、泣いてる。」 「ナオくんこそ…。」 俺たちも、嬉しさと安堵で張り詰めていた気が抜け、笑い合った。 こんな幸せな未来が待ってるなら、一生に一度の告白も、悪くないかもしれない。 母さんと父さんが、俺たちの親で本当に良かった。 「俺、母さんが叫んだ時、マジで怒られるかと思った。」 「僕も、どんな罵声が飛んでくるかと…。」 だけど母さんが怒った内容は、俺たちの背中を押すためのものだった。 これから先、辛いことがあった時…きっとその言葉に救われるんだ。 「あら、私は薄々気付いてたわよ?二人のこと。」 「「えっ!?」」 思い出して浸っていたら、またまた予想外な言葉に二人してバッと母さんを見る。 でも母さんはいつもの笑顔で笑うだけだった。 「きっと女の勘ってやつね〜!京介さんは全然気付いてなかったけど!」 「いや、わかるわけないだろう…、お陰で目が飛び出しそうになるくらい驚いたんだぞ…。」 「可愛い息子が二人して恋人作っちゃって寂しいわねー?」 「…フン、別に寂しくなんかないさ。俺には麻衣子さんがいるからね。」 「ふふっ、涙の跡、残ってますよ。」 母さんがティッシュで目元を拭き取ると、少し恥ずかしそうにしながら「ありがとう」と呟く父さん。 いつも以上に家族の雰囲気が穏やかになって、打ち明ける前よりも、四人の心の距離が近付いたような気がした。 「ダァーッ!疲れたっ!」 部屋に戻り、ネクタイを緩め、シワにならないようスーツをハンガーにかけた。 すぐに部屋着姿になった俺は、隣のシュンくんの部屋に向かう。 「シュンくーん?」 「ん?」 「おっ、シュンくんの腹ちら!」 扉を開けると、丁度ティーシャツを着たところで、いい感じに鍛えられた腹筋がチラリと見えた。 するとシュンくんが、ニコニコしながら歩いてきて俺の目の前で止まる。 「?シュンく…っぅわ!なに…!」 突然、服をペロっとめくられ、思わず一歩下がった。 「ナオくんの腹ちら〜。」 「お、俺はダメ!鍛えてないから!」 バッ!とお腹を隠すように腕で覆うと、シュンくんは笑いながら、ソファーベッドの脇に刺さってる充電器に携帯を挿す。 「…ねーシュンくんはさー、もう俺と一緒の部屋は嫌なのー。」 最近は一緒に寝たりするけど、やっぱり別々の部屋だと…。 「…寂しい?」 「うん…。」 シュンくんが勉強で部屋に篭る時、俺は部屋に入らない。邪魔したくないってのも、もちろんあるけど、どうしてもそこはシュンくんの場所になるから…,。 でも、同じ部屋だったら…自然に同じ空間にいれる。俺は、少しでもシュンくんと一緒にいたいよ。 「そっか…。でも、やっぱり部屋はこのままでもいいかな?」 「え…。」 困ったように小さく笑いながら、そう言われた。 「あ、別にナオくんと一緒が嫌ってわけじゃ…」 「あっ、うん、わかってるよ!わがまま言ってごめん!なんか雰囲気に流された!ハハッ、忘れて!」 そんな顔、しないでよ。 「ナオく…」 「いやほんと、寂しいとかじゃないから!てか寂しいって何だって感じ!?同じ家に住んでるっつーの!アハハッ!」 俺、ほんと…ダメになったなぁ。

ともだちにシェアしよう!