137 / 146
Page137:夜這い宣告
欲張って、欲張って、手に入れても、まだ欲張ってる。
同じ家に住んでて、親にだって認めてもらえて、これからもずっと一緒にいられる…のに。
「あーっと、シュンくん、これから勉強する?じゃあ俺、ゲームしようかな!」
一分一秒だってシュンくんと離れるのが嫌だとか、なんだか女々しくて…それ以上に依存しすぎている自分が情けなくて、ちゃんと距離を取ることも大切だと、自分に言い聞かせた。
「ナオくん。」
「ん!?あ、ごめん!すぐ出て…」
「ナオ。」
「へっ?」
部屋を出ようとドアノブに手をかけた瞬間、呼び捨てで名前を呼ばれ、少し驚きながら振り向くと、口角を上げ俺をジッと見つめるシュンくんがいた。
「なーに色々自己完結してんの。」
「え…、シュ、ン…くん?」
「ほら、こっちおいで。」
優しい口調で、さっきまでとは少し違う雰囲気を纏いながら、両手を軽く広げて俺が来るのを待つ。
「…シュン…っわ、」
戸惑いつつも、言われるがまま目の前まで行くと、ふわっとシュンくんに包まれるように抱き締められ、頭をヨシヨシと撫でられた。
「僕はね、今すごく幸せなんだよ。ナオくんと付き合えたこと、それを認めてもらえたこと…本当に、怖いくらい幸せだ。」
「…うん。」
「でも、やっぱり…親は親だからさ。二人の前では、ちゃんと息子でいたいなって。」
シュンくんに言われて、ハッとした。
二人からしたら俺たちは息子。付き合いが認められたからって、調子乗るのも良くない。
「…そうだね。うん、このままでいよ!やっぱり、ちゃんと距離も取らなきゃダメだしね!」
寂しさはあるけど、わがままも言ってられない!と自分の中で納得し、へらっと笑ってシュンくんから離れようとした時だった。
「っあーもう!」
「うぉおっ!?なんやなんやっ!?」
頭をガッと掴まれたと思ったら、ぐしゃぐしゃと髪の毛をかき乱され、俺は訳がわからず固まる。
「かわいすぎかよー…もー、どんだけ寂しがり屋なんだ君はー!」
「え、えぇ?…んむっ…!」
頭にハテナマークを浮かべていると、シュンくんの手がピタリと止まり、今度は俺の口を摘んだ。
「…ふふっ、」
「う…?」
「好きだよ。」
「…ッン、」
チュッとキスをされ、俺の頭の中は余計に「シュンくん、一体どうしたんだろう…」という疑問でいっぱいになる。
「ン…ッ、んっ、ひょ、ひゅんふ…っ!」
「んー?」
「…っしゅとーっぷ!!!」
やめる気配がなく、ちゅっちゅっと何度もキスしてくるシュンくんの肩を押すと、口元の手が離れた。
「"しゅとっぷ"って…ハハッ、可愛いなぁ。」
「な…っ!シュンくんが口摘むからじゃん!」
赤ちゃん言葉みたいになってしまい、更にそれをツッコまれて、俺は顔を赤くしながら怒る。
するとシュンくんは「ごめんごめん」と謝りながら俺の頭を撫でた。
「…今日、いつもとなんか違う…。」
「ん?そう?」
「だって…、いつもの百倍くらい俺に甘い気がする…。」
シュンくんの纏う空気が、いつもより濃いピンク色というか…なんというか…。
「んー?嬉しいからじゃん?」
「…っ、」
そう言ってシュンくんは両手で俺の頬を包み込むと、コツンと額を当てては、嬉しそうにはにかんだ。
その赤く染まった頬を見て、その熱が移ったかのように、俺の頬もじわじわと熱くなる。
「僕、ナオくんと家族になれて…本当に幸せだ。」
大好きな人からの"幸せ"なんて、嬉しい事この上ない。 だって、俺がちゃんと幸せにしてるって実感できるから。
「うへへっ、そんなの俺もだよ!」
頬に触れるシュンくんの手に自分の手を重ねて、お互い、幸せを噛みしめるように笑い合った。
「ところでナオくん。」
「うん?」
「今夜、夜這いしに行くから寝ないで待っててね。」
「えっ!?よば…!?」
「一人エッチも禁止。」
「…っ、しょ、承知した…!!」
夜はもっぱら恋人モードのシュンくんでした。
ともだちにシェアしよう!