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Page138:男の子ですから

カチッカチッと、真っ暗な部屋に響く時計の秒針が、いつもより大きく聞こえるのは、緊張してなのか、待ち遠しくてなのか…。 『今夜、夜這いしに行くから。』 「まったく、けしからん発言するものよのう!苦しゅうないっ!…なんつって!でへへ!」 見ての通り、バリバリの後者だったりする。 「シュンくん、まだかなぁ…遅いなぁ…。」 枕元にあるスマホ画面を見ると、すでに日付けは変わっていて、忘れてるんじゃないかと不安になってきた。 「…もしかして、寝てるとか…?」 ハッとして、俺はベッドから降りると、静かに部屋の扉を開け廊下を覗くように顔を出す。 廊下の電気は消えているが、シュンくんの部屋からは明かりが漏れていた。 電気が付いてるから、多分起きてはいるんだろう。…が、部屋から出てくる気配はなく、何してるのかと疑問は募るばかり。 「少し、覗いてみようかな…。」 痺れを切らした俺は、音を立てずに廊下に出ると一歩一歩慎重にシュンくんの部屋へと足を進める。 普通に部屋に行っても良かったが、シュンくんから「夜這いしに行く」と言われ、寝たフリをして「起きてよ、ナオくん」と囁かれる事を密かに期待していたので、こっそり覗く事にした。 「……特に何も聞こえないな。」 ソッとドアに耳を当ててみたが無音で。 「え……、マジで寝ちゃってる系?」 地味にショックを受けながら、静かに扉を開け中の様子を伺うと、シュンくんは机に向かってカリカリと何かを書いていた。 こちらに全く気付かないほど集中していて、普段下ろしてる前髪もゴムで結んで上げている。 学校の課題か何かなんだろうけど、正直、なんかその姿にムラッと来てしまった俺は、そのまま自分の部屋に戻る事なんて出来ず…。 「シュンくん…。」 ふわっと後ろからシュンくんを抱きしめ、ちゅっちゅっと頭にキスをした。 「えっ、ナオくん…っ!?」 もちろん、シュンくんは凄く驚いていたけど。 「んー…、シュンくん遅いから、俺が夜這いしにきちゃった…♡」 俺だってね、男の子なんですよ。

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