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Page143:父と子の秘密
「ん……。」
喉の渇きに目を覚まし、時計を見ると午前四時を回ったところだった。
隣には、規則正しい寝息を立てるナオくんがいて、起こさないようにソッとベッドから抜け出す。
ほんの数時間前まで激しい運動をしていたせいか、少し体にダルさが残っていて、肩に手をやりながら階段を降りていった。
「あ…シーツ、洗わなきゃ…。」
疲れて、汚れたシーツを部屋の隅に放置したままナオくんのベッドで寝た事を思い出しながら水を飲む。
「…ん?シュン?」
「あ、父さん。」
不意に後ろから声をかけられ、振り向くと父さんがいた。
「こんな早くにどうした?」
「喉渇いちゃって。父さんは?ずっと仕事してたの?」
「うん、やる事があってな。」
「ふーん、あんま無理しないようね。」
「あ、あぁ、ありがとう…。」
こんな時間まで仕事をしていたなんて、大変だなぁ…と呑気な事を考えながら、使ったコップを濯いでいると、突然父さんが不自然な咳払いをした。
「…?」
コップを水切りカゴに置き、手を拭いて振り向くと、何故か僕から視線を逸らす父さん。
その行動はあまりに不自然で、思わず小首を傾げる。
「…あー、なんだ…その……。」
「ん?なに?」
「年頃だからな、しょうがないかもしれないが…、あまりナオくんを泣かせるなよ。」
「…え?」
「あと、見える場所に印をつけると…麻衣子さんに、からかわれるぞ…。」
「………っ!!」
父さんが自分の首元をトントンと指をさし、僕の首筋にキスマークが付いてるんだとわかった瞬間、一気に顔が熱くなり、バッとその場所を手で隠す。
父さんのぎこちない態度も言葉も、全て理解した。
「ごっ……ごめん、なさい…。」
「いや、うん…なんていうか…まぁ…、気を付けなさい。」
「う、ん……ね、寝るね…、おやすみ…。」
「あぁ、おやすみ。」
逃げるように部屋に戻ってベッドに潜り込むと、ナオくんがむにゃむにゃ言いながら寝返りを打つ。
「幸せそうな寝顔……はぁっ…。」
「うひひっ、しゅんくん…こっち、きてぇ…。」
「…人の気も知らないで…、可愛い奴め…。」
恥ずかしさでのたうち回りたいところだが、寝言で僕の名前を呼んだナオくんに負けた僕は、チュッとキスをして目を閉じた。
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