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第14話  内緒の話

 食事を終えて衣料品店の開店時間まで暖かいお茶を飲んで過ごす事になった。 「睦月、寒くない?部屋の温度上げようか?」 「大丈夫だ。お前は大丈夫か二日酔い」 「うん、大丈夫」 「そうか。なぁ、晴」 「何?」 「聞いて欲しい事がある」  少し話にくそうにしている睦月に晴の心の中に緊張が走る。湯飲みを掴む手に力が入った。 「俺の仕事の事だ」 「仕事?仕事がどうかした?」 「あぁ、前に秘書だと話したのは覚えているか?」 「もちろんだよ」 「その俺の仕事の中には、友長和樹の世話も含まれるんだ」 「な、何それ?」 「言葉の通りだ。世話係なんだよ俺は」  睦月の突然の話に、晴の頭の中は混乱する。和樹?何故ここにその名前が出てくるのか分からなかった。 「友長和樹ってうちの店に来てくれる和樹くんだよね?」 「そうだ、その和樹だよ。だから俺はここの住所もお前の名前も会う前から知ってた」 「えっ!それって……睦月が『ジョーベ』に来たのもわざと?」 「それは違う。ただ、最近和樹が立ち寄る店のマスターとして書面で知っていただけだ。もし俺が会うなら月嶋雫の方だ」 「そっか、そうだよね。ならどうして突然話してくれたの?」  晴には睦月の話す事の意図が分からない。しっかりと顔を見つめて話の続きを促した。 「晴には隠し事をしたくなかったのと、お前の意見が欲しい」 「僕の意見?」 「そうだ。近くで和樹と月嶋雫を見ていてどう思う?」 「あぁ、なるほど。2人の仲って事か」 「そうだ」 「僕の意見は1つだよ。和樹くんは雫くんの事が好きだよ。あれは絶対に。でなければあんなに雫くんの為に行動はしないよ」 「だよな」  晴の言葉に苦笑いをする睦月がいた。その顔は年相応な気がした。 「でも雫くんはそんな和樹くんの思いに気が付いてないよ」 「あぁ、それは分かっている」 「何か問題でも?」 「雫がその思いを受け止める可能性はあると思うか?」 「そ、それは僕の感だけどそれでも良い?」 「あぁ」 「あると思うよ」 「そうか」  晴の言葉に睦月は考えるように腕を組んだ。 「何か問題でも?和樹くんと雫くんの事反対なの?」 「その逆だ。幸せになれるならなって欲しい。問題は和樹の父親だ」 「父親?睦月は和樹くんの父親の秘書なんだよね?話の流れから言ったら」 「そうだ」 「じゃあ、和樹くんの父親が反対するって事か……」  晴の頭の中には自分がゲイだと分かり嫌悪し、憎み、勘当までした自分の父親の姿が浮かび身体の芯から冷えていくのを感じた。 「晴、顔色が悪い。大丈夫か?」 「ねぇ睦月。睦月は反対されない?」 「大丈夫だ。俺には反対するような家族はいない」 「本当に?」 「あぁ、心配は要らない。俺の家族は今は天国で仲良く3人でいるさ」 「ご、ごめん」  晴は睦月の言葉で彼の家族の状態を理解した。睦月にはすでに家族はこの世に居ないという事だ。3人と言うことは兄、姉または弟か妹がいた事になる。 「気にするなよ晴。俺にはお前といて障害はない。それにそんな障害があったとしても俺はお前を選ぶ」 「ありがとう睦月。僕にもいないよ。すでに父親から勘当されてるし、味方だった姉とだってもう縁は切られてる」 「なら俺たちには問題は何もない。でも和樹には大きな障害が立ちはだかってる」  睦月の言葉で和樹の状況を晴は理解した。親という大きな壁が和樹にはあるという事だ。まだ2人の未来はどうなるか分からないが、苦難が待っていないことを心から願った。

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