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第30話 朝のひととき
クリスマス前の22日から24日まで、カレンダーのお陰で睦月との初めてのクリスマスを晴はゆっくり一緒に過ごせる事になった。カフェが終わり食事の用意をしているところに睦月がやって来た。
「来たぞ」
「睦月いらっしゃい。もうすぐ夕飯の準備が終わるよ。直ぐに食べるでしょ?」
「あぁ、よろしく頼む」
夕食は睦月の身体を考えて和食にした。
茄子の揚げ浸し、だし巻き卵、ブリの照り焼き、具沢山の豚汁、そしてご飯。そのメニューを綺麗に平らげて、ご飯のお代わりを2度もしてくれた。
お風呂を交代で済ませると、晴は一足早いクリスマスの為にクリスマスディナーの下準備を始めた。
「おい、湯冷めしないようにしろよ」
「分かってるよ。先に寝てて」
「いや、布団の中で待ってるよ」
そう言って睦月は晴にウインクを1つしてベットに横になった。ワンルームの為に背中に視線を感じながらローストチキンの丸焼きの下準備、ケーキのスポンジ生地を焼き始めた。気が付けば夢中で準備をしていたため、睦月の存在を忘れていた。恐る恐る睦月をのぞきに行くと起きて居るときとは違う年相応の顔をして寝ている姿があった。
(いつも渋い顔しているのに寝顔は可愛い……)
布団を静かに持ち上げて中に潜り込むと自然と抱き寄せられ、微笑みに頬が緩むのを晴は止める事が出来ない。こんな何気ない幸せに浸りながら眠りに落ちた。
翌朝目覚めると顔を見つめている睦月と目があい、気恥ずかしくなって布団を被ってしまった。それでもその布団は簡単に取られてしまう。
「なぜ夕べ起こさなかった?今夜を期待しているのか?」
「なっ!何言ってるの!してないからね。僕にとっては初めて恋人と過ごす大切な時間だから楽しみたいだけだよ」
「悪かった。そうか、光栄だな。よく考えたら俺もこの日を大切な恋人と過ごすのは初めてだ。じゃあ、朝食を外で食べてどこか出かけないか?」
「それ、良いね!行こう。なかなか外食が出来ないから楽しみ」
「じゃあ、着替えて行こうか」
お互いに身だしなみを整え終える頃には朝の7時30分近くになろうとしていた。
「お店はどこに行くの?」
「俺のお薦めのお店だ。今から行けば8時のオープンに間に合う。車で行くぞ」
「分かった。」
部屋の戸締まりをして裏口の鍵を閉めた晴は寒さに身を縮めながら、先に行って車の中を暖めてくれている睦月の待つコインパーキングに急いだ。
お店の目の前のコインパーキングに駐車すると、時刻はオープンの時間を少し過ぎていた。そのお洒落な純喫茶の中はママと呼ばれる主人が持つ優しい雰囲気のままのお店だった。
「ここはフルーツサンドがお薦めなんだよ。晴はどうする?」
「じゃあ、そのお薦めにするよ」
「OK、フルーツサンドのセットで、飲み物はコーヒーと紅茶どっちにする?」
「僕は今日は紅茶を」
「分かった。注文お願いします」
「はい、今伺います」
優しい笑顔を浮かべてカウンターに座る晴たちの前まで手を止めて来てくれた。
「Bセット2つで、コーヒーと紅茶をお願いします」
「はい、少々お待ちくださいね」
届けられたフルーツサンドはとてもボリュームのあるモノで、サラダと紅茶というセットだった。初めて見た晴は目を白黒させた。
「すごっ!」
「だろ~。でもペロッとイケるぞ」
そう言って届けられたコーヒーを一口飲んだ睦月は早速隣でパクついていた。いつ見ても豪快なのに綺麗な食べ方だった。晴も届けられたティーポットからカップに紅茶を注いでから口に入れた。
「……美味しい」
「だろ?晴なら作れるんじゃないか?」
「いや、簡単には無理だと思う。こんな軽いクリーム初めてだし」
まるで自分が作ったかのように自慢してくる睦月に心の中が擽ったい
「お褒めいただきありがとうございます。でもクリームのレシピは内緒なのよ」
2人の会話に入ってきたお店のママに内緒と言われたが、いつか再現したいと晴は思っていた。
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