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第44話 自己紹介
「ほら見なさいよ、大切な子泣かせちゃって。相変わらず最低男ね」
「春日、うるさい」
「まぁ、私に逆らうの?」
「はい、はい、春日お嬢様」
すらりと伸びた身長に美しいくびれを上手に生かしたスーツを身につけている女性は晴の前まで来ると名刺を差し出して来た。
「春日不動産の春日小夜子と申します。今後よろしくお願いします」
「自己紹介が遅くなって申し訳ありません。三山晴と申します」
顔の涙を拭って挨拶をした。
「あの~、春日不動産って僕のランザも関わったあの不動産ですか?」
「そうです。この度この馬鹿から部屋の依頼を受けて参りました」
「睦月、もう部屋も決めたの?」
「あ~、ごめん」
何も聞かさせていなかった僕の眉間に皺が寄った。僕だっていつも側にいたい。それでも通す筋があるだろう。
「どういうことかな?僕、一緒に暮らそうもさっき聞かされたばかりだよ」
晴が感じていた不安や悲しみが怒りを増大させてしまった。晴は睦月の前に立つと仁王立ちになり腕を組んだ。
「いや、喜ばせたかったんだ。悪い」
「僕にも考える時間とか選ぶ自由とかあるのって分かってる?」
「もちろんだ」
「じゃあ、部屋の話は不動産屋さんが先じゃなくて僕じゃないの?」
「そうだな。先走ってごめん」
「フフ、フフフ、あはは、あははは……、ご、ごめん、こいつを言いまかす人がいるなんて初めてで、おかしすぎるんですけど。子どもの頃からしゃべらせたら誰も彼も泣かせてたのに」
「うるせーぞ春日」
拗ねた顔をしたら睦月も年齢らしく年下に見えた。
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