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第46話 期待の心

引っ越しが終わった週明け、お店を開ける時間が近づくなか、類くんが期待に満ちた顔をして晴を見つめていた。 「どうしたの?類くん」 「ねぇ、ねぇ、いつ僕らを新居に招待してくれるの?」 「えっ、来たい?類くん」 「もちろんだよ。そのためにベッドを買いに行くのも協力したじゃん」 「そ、そうだったね」  ベッドの話をされると弱かった。 「分かったよ、彼にも聞いてみるけど、嫌がったらごめんね」 「それは了解。でも、晴ちゃんの彼なら許してくれると思うな~。雫くんも楽しみにしてるんだよ。くれぐれもよろしくね」  新居の響きに胸がときめいた。  そこにみんなを招待したらどんなに楽しい時間になるだろう。こんな風に周りにも恵まれ幸せになれたのも全て前に進ませてくれた睦月のおかげだろう。  今夜、睦月に話そう。和樹くんの事があるけれど空き時間は『ランザ』で過ごすかな~、なんて言っていたから、きっと賛成してくれるはず。  その日の晴の微笑みはいつにも増して穏やかでお客からの評判の良い一日だった。  玄関の鍵を開けて長い廊下を抜けリビングに着くと寛ぐ睦月がいた。 「ただいま~、睦月」 「お帰り、疲れただろ?」  立ち上がって晴の前まで来ると額にキスをした。 「大丈夫、夕飯の用意するね」 「料理が出来なくて悪いな」 「気にしないで、その代わり部屋の掃除とかはしてくれるんだからこちらこそ感謝だよ、じゃ、コートを置いてくるよ」 「簡単な物で良いからな」    離れる寸前まで手を握ってくれていた睦月に2人って良いなってコートをハンガーにかけながら頬はデレてからキッチンに入り夕食の支度に取りかかった。  食事も終えて、ソファーでコーヒータイム 「睦月、お願いがあるんだけど」 「どうした?」  口を付けていたコーヒーカップから顔をあげて、晴の方へ身体の向きを変えた。 「今度、ここにカフェのみんなを招いてパーティーをしても良いかな?和樹くんも来ることになると思うから気まずかったら断るけど……、出来ればみんなにここを見てもらいたいって思ってるんだけど」 「どうせ、類って子にせがまれたんだろ?和樹に会っても支障は無いし構わないぞ。ただし、次の土日は俺にくれないか?」  晴は和樹に身を寄せると優しく和樹に抱き寄せられた。 「次の土日?何かあるの?」 「あぁ、また、あそこに行かないか?星を見に」     抱き寄せられた腕の中からあげた顔は笑みで崩れていた。晴は睦月に抱きつくと耳元で行くと返事をした。そして睦月からは濃厚なキスの雨が降り注いだ。 睦月が仕事に部屋に籠もったあと、晴は翌日のケーキの仕込みに2ホール、スポンジを焼くと星を見に行く日に思いを馳せた。

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