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「ねー春真ぁ?おまえの弁当箱、なんでこんなに可愛らしいの?」
風呂から出て水飲もうと思ったらさあ、食器受けに洗って置いてあるの見ちゃったんだけど。
職場に弁当持って行ってるのは知ってたけどさ。
ピンクと白で小さいハートが散らかった二段重ねのお弁当箱って──女子か!
「それ?流石にオレのじゃねえよ。同じ課に料理の趣味が合う子がいてさ、たまに作った弁当交換するんだよ」
「──はあ?なんだそれ」
ホントに女のかよ。
「腕前自慢?みたいなもんかな」
そりゃオレは料理なんて趣味じゃないから知らないけどさ、する?そんなこと。
料理好き同士なら有りなの?
いや、違うよね。
「それ、タゲられてんでしょ」
「んー。そうかもな。オレにはそんな気ないけど。職場で恋愛とか、しんどいだけだし」
何そのタラシ発言!?分かっててやってんだ。お前そんな奴だったの!?
「……おい秋彦……?」
まあ、おまえ男前だもんね。
がっついてないし無害そうだし、女がほっとかないタイプだろうとは思ってたよ。
「顔掴むなよ、離せよ」
「そのお弁当ちゃんも頑張ってんのに可哀想だね。女の子じゃおまえ満足出来ないもんね」
あー。なんでこんなに苛つくんだろ。
お前なにオレに、こんなこと言わせてんの?
「だからそれ、違うって言ってんだろ!」
「オレも言ってんじゃん、違わないって!突っ込まれてよがってんのお前じゃん」
なんだよ?図星だから怒ったの?
オレの手振りほどいて隅っこでクッション抱えてなにやってんの。
面倒臭い女みたいだねお前。
でも謝んないよ。間違ったこと言ってないもん。
オレは誰とでも寝ないし。
今オレが抱きたいのはお前だけなんだよ。
「来いよ。ヤるからベッド行くよ」
「ヤんねえよ」
「ヤるんだよ。お前が荒らしたんだから、お前が癒やしてよ」
「勝手なことばっか言ってんな!」
なんかすごい嫌な感じ。
お前を抱きたいのはまあ、いつものことだけど
今日は少しも優しくしたくないや。
意地悪したいのとはちょっと違うんだよね。
優しくしたいって思えない。
こんな気持ちが自発的に起こるわけないから、原因はお前だよ。
責任とってよ。
「いいから来なよ。引きずってかれたいの」
「…………」
ああそう。別にいいけどさ。
「──痛った──!」
たいしたことないでしょ。
突き飛ばした所ベッドの上なんだしさ。
素直じゃないお前が悪い。
「──あとさあ──お前が淫乱なのは仕方ないにしても、オレは不特定多数を相手する奴とヤりたくないんだよね。今はオレだけにしてくんない」
「──は……?お前なに言って……」
そういう話じゃなかったのは分かってるけどね。
これもオレの本心には変わりないし言うこと聞けよ。
「その代りオレが性欲満たしてあげるからさ──どこがイイの、ここ?」
「いっ──あ……」
乳首摘み上げただけでその反応。
ほんと快楽に弱いよねお前。
そんなんだから、心配にもなっちゃうんでしょ。
「舐められるのと捏ねられんの、どっちが好きなの」
せっかく気持ち良くしてあげようとしてるのにさ
答えないんなら好きにしても良いよね。
思いっきり、噛んであげよっか?
「ん、あああっ──」
──あ、これか。
これが一番感じるんだ。
やっぱ痛いの好きじゃん。
……これだけでフル勃起ってお前さあ──。
オレのこと怒ってたんじゃないの。
乳首とちんこ両方、結構乱暴に弄ってるよねオレ。
優しいセックスが好きなんでしょ。
そんなのしてあげないのに、なんでトロトロな顔見せてんの。
もっと切羽詰った顔しなよ。
全然、イジめ足りないんだよ。
「あっ、秋彦──ダメだ──お前がそんなの、すんな──っ」
お前が嫌がることって、もうこれしかないなと思ったけど、やっぱそうだったね。
してやるよフェラ。
すごい、怯えたみたいな顔してる。
いつもオレには気持ち良さそうに奉仕してるじゃん。
されるのって──そんなに違う?
うわ、カリ、熱い。
口の中、すごい圧迫感。
押さえ付けて人のちんこ舐めるって、異様に興奮するかも。
お前はもっと、自分が奴隷みたいにご奉仕するから
気分的にそうなるのかと思ったら全然違うじゃん。
口淫、って言葉がぴったり。
お前オレの口に犯されてんだよ。
「──ダメだ……て……言ってん、だろ──くっ……そ──」
ダメって言ってる割にはさ──結構えげつない動きするよね。
それ無意識なの。腰ガンガン突き上げちゃって。
いつもオレに抱かれて、お前の雄はどこ行っちゃったのかと思ってた。
本能が消えてなくなるわけないか。
オレも口のなか穢されてるみたいで──ゾクゾクする。
それだけじゃ、満足しないけどね。
「うぁ……っめろ……指まで……挿れ……っな……」
オスとメス同時に攻められるのってどんな感じすんの?
脳みそ溶けちゃってて答えられそうではないよね。
まあ何度も寸止め繰り返してればバカにもなるか。
お前がエロく喘ぎまくるから
触ってないのにオレももうガチガチだよ。
──もう挿れるから。
「──っあ、ああ──あ──」
挿入だけでイッたねお前。
前戯に時間掛けすぎたとは言え
まだまだこれからだよ?オレ。
お前がイッたからって容赦しないの分かってるでしょ。
「あき……ひこ……ぉ」
え?なに?なんだよ──キスして欲しいの?
急にしおらしくなるって、ずるいんだよお前。
「んっ──ん……ん──」
キスしながら奥突くとすごい締まる──。
もしかしてイキっぱなしになってんの?
自分から腰押し付けてんの分かってる?
すげ……春真がエロい……。
は──どうしよ、オレも頭とけそう。
くそ、もっと可愛がりたいのに……。
「春真……気持ちい?」
「いいよ、すごい──っ気持ちい……」
「お前トんでんじゃないよね──分かってる?いま誰とセックスしてんの」
「秋彦に……決まってる、だろ」
「──素直な春真、ほんとクるよね……全然足りないこんなんじゃ。今日もこのままずっと、朝までしよう?」
お前が女だったら良かったね。
孕ませて既成事実作っちゃえば、道理に叶わなくてもオレのもんだもんね。
分かってるよ。言っちゃいけない事だってくらい。
でもそんなこと思っちゃうくらい、お前がオレをクズでクソな男にしてるんだよ。
お前ってオレの何なんだろうね。
もうやばいかも。
だってオレ、自分で思ってるより気持ちと身体、分けられる人間じゃないみたい。
完全にカラダにひきずられてる──。
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