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12−3
「秋彦、オレ…………寒い」
え、なに。その反応は予想外。
ちょっとちょっと春真。
身体ガタガタ震えてるじゃん。
「わ。手すごい冷たい」
そういえば帰ってすぐ暖房もつけずに春真のコートと上着をさっさと脱がせて話し込んでた。オレはコートすら着たままだから無意識で寒かったんだろうな……。可哀想なことした。
「ごめん気付かなくて。風邪ひいちゃうよね。
すぐシャワーで温まってきな」
「そうする……」
あー。ペンギンみたいによちよちして……。
酒も抜けきってないはずだしな。温まったらまた回るし今日はこのまま寝かせてあげよっか。
あれ、なんかオレすごい寛大じゃない?
本当なら手酷いお仕置きされても文句言えないよね。変なおっさんに目つけられて来るし、オレには気を使いすぎるし、そのくせ素直になんないし。
でもまさか……あんな一筋縄じゃいかなそうなの連れてくるとは思わないよね。しかも男。お前も男に口説かれるって状況自体には、それほど驚いてる感じもないよね。だったらもっと上手くあしらってよ。隙見せすぎでしょ。女相手には割とクールに距離取るみたいなのに。
今回網代を躱 したとしても、きっとまた春真の周りに虫は沸く、よなあ……蹴散らしたくて仕方ないよね。けどさ、それが出来るのって──お前が手に入ってからじゃん。
「春真とはただの友達 ですけど邪魔なんで、お前ら全員消えて無くなって下さい」って通用する世界ないよね。
あー面倒くさい。お前にだけなんだよ?
こんなに付き合い方一つで悩むの。
これでも真剣なの。でも告白はしない。
オレがしたら──意味がないから。
ホントもう早く折れてよ。
あ、シャワーから出てきた?
はあ?……バカなの?なんで裸だよ。服着なよ、ちょっと温まったからって。もう、犬みたいに頭振ってないでちゃんと拭いて。まだ酔ってんの?
はいタオル、髪から水たれてるって。なんで風呂場から出てきて持ってこないんだよ……えーなに、オレが拭くの?どうしてそんなに気が抜けちゃったんだよ。
ワシワシ拭かれて、
ほんわかした顔してんなよ。
「春真ぁー」
「ん?」
「お前オレのもんになる?」
「……なんて?」
──いや聞こえてないわけないよね。
「その、それって……」
「うん」
「──網代さんからの防波堤になってくれる的な、意味だよな」
ああ──
さっきの話ちゃんと理解してたんだね。
「まあそれもあるけど、それがメインってわけじゃ──」
「そんなのいい」
「は?」
「そこまで迷惑かけられねえから、一人でなんとか……するから」
「はい?」
ダメじゃん。全然伝わってないやコレ。
こいつの中のオレって『自分に対して絶対に恋愛感情を抱かない奴』なんだろうな。完全無欠の片想いだと思ってんだよ、未だに。
そんなわけあるかこの大ボケ。
オレの何を見てんだよ特大春巻きめ。
春真がド派手なくしゃみをする。
いつまでもそんな格好してるからだよね。
もういいや。
どうせ今日はお前も酔ってるし。
「はー。オレもシャワー浴びてくる。
ほら、そこ退いて、早くなんか着な」
「ん…………あ。秋彦」
「なに?」
え、なにこれ。
春真がしがみついてキスしてる。オレに用意がなかったから思い切り背伸びして。
なんのつもり。
そういうムードじゃなかったでしょ今。しかも身体に腕まわそうとしたら逃げてった。
なんだよそれ犯されたいの。
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