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「秋彦、オレ…………寒い」  え、なに。その反応は予想外。  ちょっとちょっと春真。  身体ガタガタ震えてるじゃん。 「わ。手すごい冷たい」  そういえば帰ってすぐ暖房もつけずに春真のコートと上着をさっさと脱がせて話し込んでた。オレはコートすら着たままだから無意識で寒かったんだろうな……。可哀想なことした。 「ごめん気付かなくて。風邪ひいちゃうよね。  すぐシャワーで温まってきな」 「そうする……」  あー。ペンギンみたいによちよちして……。  酒も抜けきってないはずだしな。温まったらまた回るし今日はこのまま寝かせてあげよっか。  あれ、なんかオレすごい寛大じゃない?  本当なら手酷いお仕置きされても文句言えないよね。変なおっさんに目つけられて来るし、オレには気を使いすぎるし、そのくせ素直になんないし。  でもまさか……あんな一筋縄じゃいかなそうなの連れてくるとは思わないよね。しかも男。お前も男に口説かれるって状況自体には、それほど驚いてる感じもないよね。だったらもっと上手くあしらってよ。隙見せすぎでしょ。女相手には割とクールに距離取るみたいなのに。  今回網代を(かわ)したとしても、きっとまた春真の周りに虫は沸く、よなあ……蹴散らしたくて仕方ないよね。けどさ、それが出来るのって──お前が手に入ってからじゃん。 「春真とはただの友達(セフレ)ですけど邪魔なんで、お前ら全員消えて無くなって下さい」って通用する世界ないよね。  あー面倒くさい。お前にだけなんだよ?  こんなに付き合い方一つで悩むの。  これでも真剣なの。でも告白はしない。  オレがしたら──意味がないから。  ホントもう早く折れてよ。  あ、シャワーから出てきた?  はあ?……バカなの?なんで裸だよ。服着なよ、ちょっと温まったからって。もう、犬みたいに頭振ってないでちゃんと拭いて。まだ酔ってんの?  はいタオル、髪から水たれてるって。なんで風呂場から出てきて持ってこないんだよ……えーなに、オレが拭くの?どうしてそんなに気が抜けちゃったんだよ。  ワシワシ拭かれて、  ほんわかした顔してんなよ。 「春真ぁー」 「ん?」 「お前オレのもんになる?」 「……なんて?」  ──いや聞こえてないわけないよね。 「その、それって……」 「うん」 「──網代さんからの防波堤になってくれる的な、意味だよな」  ああ──  さっきの話ちゃんと理解してたんだね。 「まあそれもあるけど、それがメインってわけじゃ──」 「そんなのいい」 「は?」 「そこまで迷惑かけられねえから、一人でなんとか……するから」 「はい?」  ダメじゃん。全然伝わってないやコレ。  こいつの中のオレって『自分に対して絶対に恋愛感情を抱かない奴』なんだろうな。完全無欠の片想いだと思ってんだよ、未だに。  そんなわけあるかこの大ボケ。  オレの何を見てんだよ特大春巻きめ。  春真がド派手なくしゃみをする。  いつまでもそんな格好してるからだよね。  もういいや。  どうせ今日はお前も酔ってるし。 「はー。オレもシャワー浴びてくる。  ほら、そこ退いて、早くなんか着な」 「ん…………あ。秋彦」 「なに?」  え、なにこれ。  春真がしがみついてキスしてる。オレに用意がなかったから思い切り背伸びして。  なんのつもり。  そういうムードじゃなかったでしょ今。しかも身体に腕まわそうとしたら逃げてった。  なんだよそれ犯されたいの。

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