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13−2
「オレそんなにお前を怒らせる事した?」
はあ?無神経も甚だしいよね。逆撫でしてんの分かんない?こっちは往来で爆発しないよう必死になって耐えてるのに。
「秋彦っ、なんか言えよ」
お前がそんなこと言い出したの玄関の前で良かったよ。もう限界。
土足で上がる勢いで腕を掴んでベッドまで引きずり、思い切り突き飛ばす。起き上がる暇なんて与えずに伸し掛かって見下ろしてやる。流石に怒鳴りたくはないから変に声を抑えたせいで自分でもあんまり聞かない低音になった。
「あいつと二人で会わないって言ってなかった?」
「なんだよっ。なに怒ってんのか分かんね──断るの面倒になったんだよ、ゴリ押しすごかったし。まあ距離近いけど普通に紳士だし、外で何が出来るわけでもないだろ」
「おまえ本気で言ってんの。自分に好意がある奴に、分かっててその態度って。とんでもないビッチだな」
「はあ?好意って、網代さんだってそんな本気じゃねえよ。あの人も遊びだろ。潔癖なお前が嫌がる事なんて起きねえから」
オレが潔癖?なに言ってんの。
そういう事じゃないって、なんでこいつは分かんないの。
「拒絶しなきゃ承諾も同然だろ。遊びで近寄ってんの知ってて受け入れんなら、その遊びに応える気があるって思うだろ網代は」
「そしたらちゃんと拒否するって──」
「そん時になってお前に拒否なんか
できるわけねえんだよ!!!」
ああ、結局怒鳴っちゃった。
春真が怯えた顔してる。
「……なんで……秋彦が怒るんだよ……
お前がそんなに怒る、んぅっ」
理由?資格?権利?
何がないって言いたいの。
今はお前の言葉がすっごい耳障りなんだよ。キスで黙らすにも限度があるよね。
「ちょっとここで大人しくしてられる?」
「は?──やだよ、なんだよ」
「じゃあしょうがないか」
仮にもクリエイティブ職なのに会社が私服不可なとこ不満だったんだけど、初めてスーツで良かったと思ったよ。正しくはネクタイがあって。
よく分かってない春真に悟られる前に、引き抜いたネクタイで掴んだ手首をぐるぐる巻きにする。グシャグシャになったけど、もう使えなくても構わない。お前にも縛った跡が残るかもしれないけど──構わない。
「なっ、んだよ、秋彦。外せよこれっ、なあっ」
バスルームに行ってハンドタオルとフェイスタオルを手に戻る。
「なに──どうするんだよ──ふ、ぐぅ……っ」
口を塞ぐの。お前が煩いから。
今はお前の嫌だのやめろだのを聞いてる余裕なんか、ないんだよ。
見たいのはオレを受け入れるところだけ。
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