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14-1 青春とは 斯くも拗れるものである

 始まりは中1の文化祭だった。  オレたちのクラスの出し物は有りがちなお化け屋敷。オレはお化けをやりたかったが、くじで引き当てたのは受付係だった。しかも男女で制服を交換しないといけない。誰かが面白いと思って付け足した、よく分からないルールだ。 「交換相手が日永(ひなが)で良かったぁ。あんたならキモくないし。あたし似合うと思ってウィッグ持ってきたんだ。早く着けて」  制服の交換相手の女子生徒が黒髪ロングのウィッグを持って迫りくる。  マジかよ。女装ですらアレなのに。 「冗談だろ、誰がかぶるかそんなもん」 「ひっど……あたし、文化祭をみんなで盛り上げたいって……せっかく用意したのにぃ」 「日永、あんた女子泣かすとか何様?」 「空気読めよ日永」 「日永くんサイテーなんだけど」  言ったのは全員女子だ。嘘泣きだった。なのに周りは白い目で見る。  そうしてオレ一人が悪者になり、セーラー服と清楚系。そんなオレ史上最悪の黒歴史が出来上がった。  むちゃくちゃに評判が良かった。  それが尚更オレを(はずかし)めた。 「みーんなー。そろそろ始まるけど準備バッチリー?今日はアゲアゲのモリモリでいっちゃおーねー!」  朝一で実行委員会に出ていた観月(みづき)が教室に戻ってきた早々、騒いでいる。  クラスではお調子者だか人気者だかのポジションの奴だった。とにかく周りによく人が集まっている。オレとは特に仲が良いわけじゃない。ただのクラスメイトだ。  お化け屋敷でアゲアゲのモリモリ……?  何を?どこを?幽霊を?  オレは観月の言ったどうでもいい言葉の意味を、何故だかグルグル考えていた。 「んじゃー受付の日永。あれ日永どこー?  ひな──………っっっ!!!」 「────?」 「おま……日永?」 「そうだけど」 「……っわいい」 「え?」 「日永、かっっっっわいいいい~」 「っなんなんだよお前!?」  上履きが脱げて飛ぶ勢いで、全身をバネのように飛びかかって来る観月に恐怖したオレは、死に物狂いで振り払った。  積み上げた机の山に突っ込んだ観月は右の手首にヒビが入った。

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