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第12話 やっと、

「シルは、ずっとあの人のこと考えてるの?」 「違う、考えたくない。でも、ドナが触ってくれないから、こんなに苦しいのにあいつに触られたことしかないから」 「俺がシルのこと、……その、抱いたら、あの人のこと考えなくなる?」  その言葉に、小さくこくりと頷く。  ドナは暫く何も言わなかったが、一度深い溜息を吐くとシルヴィオを自分の隣に下ろした。 「俺さ、前も言ったけど今まで誰も抱いたことないんだよ。だからやりかた勉強するまで待っててほしかったんだけど」 「俺じゃない奴、抱くのか?」 「違うよ、そんなことするわけないじゃん。でも、アルファの友達にどうやったら恋人を気持ちよくさせられるかとか、色々聞いたりしてたのに」 「俺、ドナに触られるならなんでもいい」 「シルは優しいからそう言ってくれるんだろうけど、やっぱり俺もアルファだからさ。少しはかっこつけたいんだよね」  シルヴィオの額に鼻を押し付け、首筋の匂いをすんすんと嗅ぐ。  これだけで、結局してくれないんじゃないか。そう思ったシルヴィオの上に覆い被さるように、ドナは頰を顔に擦り付けてきた。 「発情期終わってから改めてしたかったのに、そんなこと聞いたら待ってられないよね。ちょっと俺怒っちゃった」 「俺に?」 「あの人に。ごめんね、初めてだから痛くしちゃうかもしれない」  シャツの間から覗く肌を舐め、肩に軽く噛み付く。邪魔だとばかりに紐を緩めた下衣を纏めてずり下げられ、ドナは初めて見せる表情で見下ろしてくる。  獲物を捕らえた肉食獣の瞳だ。 「痛かったら言ってね、止められるかはわかんないけど」  その言葉には黙って首を振る。  何をされても止めない。それどころか目の前のアルファの存在感に、気分が高揚して仕方ない。  シルヴィオは手を伸ばし、ドナを受け入れる。獣人式のキスもいいが、と長いマズルの下、ゴムのような唇にキスをした。 「キスするなら、こっちの方がいい」  甘えるような声色に、ドナはすぐさま食らいつく。噛み付くように何度も唇を触れ合わせ、何度もざらついた舌で口腔を蹂躙した。  それさえも快感を与える材料にしかならない。シルヴィオがドナとのキスに夢中になっていると、ふかふかの何かに跨がらせるように足を曲げられる。そちらを見れば、シルヴィオの足はドナの腰の上に跨らせられ、暴力的なほど巨大な犬のそれがスリットの間から顔を覗かせ、今にも挿入されそうな気配だった。 「どな、まだ、まだだ」 「オメガなら何もしなくてもこのまま挿れて大丈夫って言ってたよ。ごめん、本当に待てない」  何もしなくても平気なんて、それは獣人同士だからだろう。そんなもの、挿入るわけがない。  体格差から抵抗しようにも押さえつけられ何もできない。押し潰すように頭からドナの毛に埋もれ、秘めた場所へと凶暴な雄の昂りが押し付けられる。  先端の細い部分が入り込んできた。押し付けられ息が苦しい、ドナの匂いしかわからない。  ぐ、と益々体重がのしかかる。ただでさえ酸欠だったのに益々呼吸ができなくなり、それでも奥へ奥へと圧倒的な質量のそれが入り込んできた。  あんなもの、入るわけがないのに何故。オメガになったシルヴィオの身体は、いとも簡単にドナの昂りをその胎内に受け入れた。  酸欠でぼんやりとしている意識の中、すぐ頭上からドナの声が聞こえる。 「ほら、ちゃんと入った」 「っ、ぁ」  いつもより穏やかで、低い声。普段と全く違うその声に耳朶が犯され、びくんと腰が跳ねる。たったそれだけで、シルヴィオは達してしまった。

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