2 / 9

第2話 side:未優

「あ!……一緒だ……」 「んー?未優、なんか言ったー?」 高校2年生になった新学期を迎えた僕、橘未優(たちばなみすぐ)は親友の森末真紀(もりすえまき)と一緒に張り出されたクラス発表の掲示板の前にいた。 「えっ何でもないよ。クラスは見つかった?僕は3組だったよ」 「ざーんねん。今年は同じクラスにならなかったねー。僕は4組だわ。でも隣だし遊びに行っても良いよね?」 「うん、もちろん」 「未優、大好き」 抱きしめてくる真紀を僕は受け止めた。 真紀は、喘息持ちで保健室にお世話になる事が多くて友達が出来ないでいた僕に「一緒にお昼ご飯食べよー」って普通に話かけて来てくれた大切な友達だ。 そんな真紀にも秘密にしている事があった。 僕はこの学園で片想いをしている。 この学園、聖高峰学園(せいたかみねがくえん)は男子校だ。 そう、僕は同じ性別のに恋をしていた。 とても、とても悩んだ。それこそ発作がでるくらい。 いくら悩んでも思いは止まらなかった。 だから僕は決めた。彼を陰から思っていようと。 僕の思いが実るとは思っていない。それでも思いを止めることは出来なかった。 初めて彼を見たのは入学前の春、グラウンドを駆け回る姿だった。 颯爽と駆け回りゴールを決めた姿が瞳に焼き付いて離れなかった。 そして、入学してみたら同じ学年の隣のクラスだった。 その時から僕の片想いが始まった。 名前はすぐに分かった。 彼の名前は朝比奈凪(あさひななぎ)。サッカー部の学年1年生にして有望株。 そして学年の人気者。それが彼だった。 だから、遠くからみていられれば良かった。 そのはずなのに、その彼と同じクラスになってしまった。 どうすればよい? 「未優ー、じゃあ、クラスに移動しようかー」 「う、うん」 「どうかした?」 「何でもないよ!」 「そう?なら行こうよ」 「うん」 ぐるぐるする思考を止めて、覚悟を決めてクラスに行こう。今はそれしかない。 「今年の担任は誰かなー。ね、未優」 「う、うん、だね」 一歩一歩階段を上りクラスへと近づく。 この学園は一学年5クラス、2年生からは文系、理系、就職クラスに分けられる。 薬学部希望の僕は理系。医学部希望の真紀も理系。 喘息を患っている僕は薬が子どもの頃から欠かせない生活だった。だから将来はそんな薬に関わる仕事がしたかった。 って、こうやって一生懸命他の事を考えていないと僕の心臓は爆発しそうなほどドキドキしているよ。 ダメ。空気が入って来ない気がする。 ダメ! ダメ! 発作が出ちゃう。 「未優!ゆっくり呼吸して」 「ま、まき……」 「ほら、ゆっくりだよ。大丈夫、発作は出ないから。ね?」 廊下の端に寄って、真紀が背中をゆっくりと撫でてくれて僕の呼吸も落ち着いて来た。 ポケットから吸入器を出して吸い込んだ。 「ごめんね。もう大丈夫。いつもありがとう」 僕は出来損ないだから、親友にまで迷惑をかけてしまう。 「また、迷惑かけてとか思ってるだろ?」 「いたっ!」 真紀のデコピンは、ほんといつも痛い。注射よりも痛いかもしれない。 発作じゃないのにうずくまってしまった。 「ほら、保健室行くよ」 「うん」 差し出された手を取って立ち上がると、教室ではなく常連の保健室に行くことになってしまった。 そしてその事が変化を呼ぶとは思いもしなかった。

ともだちにシェアしよう!