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第5話 side:凪
始業式が終わっても結局みーちゃんはクラスに戻ってくることはなかった。
終わりのホームルームでは先程集めたクジを元に担任の大竹が結果を一つ一つ黒板に書き出していった。
みーちゃん、いや、橘も、俺も役員に決まってしまった。
保健委員に橘。それから、憎らしいことに2人で担当する保健委員に親友の関根に決まってしまった。
ちなみに俺は体育祭、文化祭委員。正直一番面倒くさい役員だ。
くそっ!
役員に決まるなら俺が保健委員になりたかった。恨むぞ関根~!お門違いでもそう思ってしまう。
ただでさえ、寮生じゃない俺と橘は接点がないって言うのに。
今度、思いっきりクラブでしごいてやる。
明日からの予定を話す大竹の言葉を上の空に、関根へのしごきの内容を考えていた俺は関根に話しかけられるまでホームルームが終わったことに気が付かなかった。
「朝比奈、……おい、朝比奈!」
「あっ、悪い。どうかしたか?」
いつもに比べ幾分困惑した顔をした関根が椅子に座る俺を見下ろしていた。
「悪いけど保健室までついてきてくれないか?」
「保健室?」
魅惑的な言葉が関根の口から出てきた。もしかして俺の願望ダダ漏れだったか?
「そう、大竹から橘と顔を合わせておけって言われたけど、この面で怖がられるのは避けたいから、一緒に行ってくれないか?」
関根は自分の顔が厳つい部類に入ることを自分で認識していたらしい。
関根の願いに異論があるはずはなかった。むしろ頼まれなくてもついて行きたい。この際さっきのしごくのはなしにしてやる。
「いいぜ。ジュース一本、おごりな」
「もちろんだ」
少しでも関根の心を軽くしたくて交換条件を出した。
鞄を持って教室を2人で出ると橘のいる保健室へと2人で歩みを進めた。
俺の足取りは今日の中で一番弾んだ物になっていた。
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