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第8話 side:未優
ノックの音に返事をするとスライドドアが開いてそこに立っていたのは大柄な関根くんだった。しかもその後ろには朝比奈くんがいた。
「橘です。大竹先生から保健委員に任命されたと聞きました。ご迷惑かけると思いますがよろしくお願いします」
僕は深々と頭を下げた。視界に入る朝比奈くんに頬が赤らみそう。
「関根だ。こちらこそよろしく頼むな。4月の末には委員会があるらしい。」
「もう、委員会ですか?」
「あ~、あのさ、脇から悪いけど同級生だし、敬語をやめないか?橘。」
「えっ、あの、うん、分かった。朝比奈くん。」
朝比奈くんと話を出来て頬が染まるのを止めることが出来なかった。いい男なのに厳ついイメージがついて回る関根くんが一緒にいてくれるからすぐに冷静になれる気がする。
「あれ、俺の名前知っているのか?」
「えっと、関根くんと朝比奈くんをこの学年で知らない人はいないと思う……」
そう、硬派な関根、軟派な朝比奈として校外でも有名人なイケメンだった。
関根はファンの女性からの声援にも一瞥もしない。
その反対で朝比奈はファンの女性には優しく接するが特別扱いはしない。ただ、一線を越えて来る女性には容赦しないと有名だった。
だから、校外にあるファンクラブも一定の距離を持っているらしい。
僕はこの学園にいる朝比奈くんしか見ていないから実際はわからないけど。
「俺が有名なのは怖がられているからだろ。」
「あーーそれはないよ~。イケメンじゃん関根。2人ともそれで有名だよ。僕は森末真紀、2組よろしくね。て事で、イケメンが2人揃って何をしているの?」
「朝比奈、俺らイケメンだって、お前知ってるか?」
「いや、知らない。てか興味ない。」
「だよな。俺もだ」
いきなりの真紀の登場とイケメンと言われることへの驚きか、関根くんの眉間の皺が深くなる
「あ~あ、そんなに眉間に皺を寄せてたら、後が残るよ~ほらしゃがんで~。」
「こら、真紀。止めなよ」
物怖じしない真紀が来てくれたから一気に僕の心も和んだ。
「ごめんね、朝比奈くん。真紀が関根くんに。」
「いや、アイツにあんな風に近づいてくれる人間は少ないからあれでも、喜んでる。」
「そうなの?」
「あぁ、でないとあんな風に素直にしゃがむわけ無いからな。」
うわ~、朝比奈くんと話してる~。
こんなに近くにいる。
僕を保健委員にしてくれてありがとう。
「真紀、僕と関根くんが保健委員になったから、ここまで挨拶に来てくれたんだよ」
「俺はその付き添い」
僕の横で朝比奈くんが小さく手を上げた。
そんな何気ない姿を側で見られるなんて、嬉し過ぎる。
「そうだ!委員会って言ったら聞いてよ未優。僕も体育会、文化祭委員会になっちゃったんだよ。大変な委員会に決まっちゃった。ジャンケンで負けたせいで~」
抱きついて来た真紀を抱き留めて愚痴を聞くことにした。
「あ、それなら、俺もだ。よろしくな森末。」
「「えっ!」」
真紀が朝比奈くんと同じ委員会?
厳しい委員会だって聞いてるけど羨ましい。
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