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8-4
幼い頃から現在にかけて未だにタブー視しているセックスに牧村は呻吟した。
一方、笹倉は引き締まった腹に両手を突かせて心身ともにセックスにのめり込んでいた。
余念のない奉仕によって火照りきったペニスを軸にし、前後に、上下に、頻りに器用に腰を動かす。
途方に暮れる心と裏腹に正直に滾る牧村の熱源を内壁でたっぷりしごかせた。
「っ……それ、は……ちょっと……!」
際どい摩擦感に腰をびくつかせ、咄嗟に横を向き、片腕で顔を隠した牧村に笹倉は自身の上唇をぺろりと舐め上げた。
「牧村君、童貞っていうより、処女みたいな反応するんだね……」
「笹倉さん……その動きは、ちょっと……」
「でも、お腹の中ではドクンドクンって、男っぽく脈打ってる……」
「ッ……あ、あ、あ……待っ……!」
笹倉のテクニックに長けたグラインドに下半身を本能的に疼かせ、牧村は、つい腰を真上に突き上げた。
「んッ」
「あッ……ごめん、なさ……」
「ん……いいよ……気持ちいい……」
仮膣を思いきり貫かれた笹倉は我が身から悦びの雫を溢れさせた。
熟れた先端から透明の蜜が滴り、満遍なく発熱した雄の芯を淫らに濡らしていく。
「僕のこと、今みたいに、もっと激しく突いてもいいよ……? 牧村君も一緒に気持ちよくなって……?」
うっとりした声色による誘惑に牧村はギリ、と奥歯を食い縛った。
「やだ……」
身の内で硬く太く熱く息づくペニス。
しかしながら子供が駄々をこねるみたいに快感を嫌がり、怖がる牧村に、笹倉は心臓をゾクリと震わせた。
大きく腰を上下させ、捻り回し、腸壁で挟み込んだ熱源の存在感をじっくり満喫する。
ざらつく下肢の叢に尻丘を着地させ、弓なりに背中を反らし、肉壺全体に響く脈動を真摯に感じ取る。
徐々にピストンの速度を上げていく。
慣れた腰遣いで小刻みに激しく悩ましげに、牧村の真上で身をくねらせ、彼のペニスをこれでもかと立て続けに刺激した。
「ッ、ッ、これ……だめっ……やだ……!」
未だに片腕で必死になって顔を隠している牧村に笹倉は律動をやめずに優しく問いかけた。
「何が駄目なの……? どうして嫌なの、牧村君……?」
睾丸がせり上がって一段と怒張した棹。
自然と込み上げてくる射精感。
牧村は顔の上に翳した腕の下で涙ぐみ、魘されるように首を横に振り続けた。
「牧村君……?」
「よ……よごしちゃう……」
「汚す? 誰が誰を……? 牧村君が僕を汚すの……?」
「こんなこと……汚い……」
大切な人をあんな風に傷つけて汚すなんて俺にはできない、したくない……。
「今の僕、汚い?」
牧村は何度も瞬きした。
肉欲に素直に膨れゆく下半身、過去に現実に見た「悪い夢」を引き摺って怖がる心に板挟みになって、息苦しそうに呼吸していた彼は出血するくらい唇を噛んだ。
「牧村君、噛んじゃだめ」
「う、う……ごめんなさ……」
「こっち見て」
君も僕のことを見てくれないの?
「ッ……笹倉さ……ん……」
身代わりにされていた彼の静かな慟哭に促され、牧村は、片腕越しに涙まじりの視線をぎこちなく紡いだ。
「あ……やっと見てくれた……」
薄明かりに浮かび上がった汗ばむ肢体。
すっかり乱れた前髪越しに微笑む双眸。
鮮やかに色づく唇から零れ落ちる吐息。
我が身に跨る年上の男を見上げた瞬間、誰よりも何よりもきれいだと思った、そして。
「あ……!」
牧村は射精した。
手厚くもてなされた仮膣奥で頭がまっしろになるほどの絶頂まで与えられ、厚い腰を反らし、さり気なく鍛えられた腹筋を戦慄かせ、白濁の飛沫を迸らせた。
「は……ッ……ッ……!!」
虚脱寸前の射精感に身も心も射抜かれて、目を閉じ、呻吟し、それでも瞼を懸命に持ち上げて頭上を仰いだ。
「っ……ん……すごい……いっぱい来て……」
しどけなく仰け反った笹倉を半開きの目で無心になって見つめた。
なんてきれいな人なんだろう……。
「あ、ん……まだでてる……」
「ッ……ごめんなさい、笹倉さん、おれ……ッ」
笹倉がおもむろに自分の腹を撫で擦って「君のでおなかいっぱいになりそう」と呟いたので、牧村は閉口した。
「それに、君の、まだ元気だよ……?」
「ッ……ッ……ッ」
「ワルイコだね……」
まだ熱を保って荒々しく脈打っているペニスを腹越しに撫で、笹倉は伏し目がちに牧村を見下ろした。
「僕の中でもっとワルイコにしてあげる」
「笹倉さ……」
「おいで、牧村君……?」
過去の「悪い夢」からやっと醒めた牧村はかつてない誘惑に心身共に唆され、煽られた……。
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