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【騒がしい海辺】紅と碧湖

いや確かにね? 俺言ったよ? 『夏だし海行こうぜ! 海水浴! みんなでさ!』 そうだよ二人に声かけたの俺だよ? 言い出しっぺは俺だよ確かに! だけどね? 「サクヤー、あっち行こうよー、かき氷だってー」  おいワタルなぜ諸肌脱いでる。なんだその流し目的な目つき。 「そんなことより水着美女が固まってるあっちだよな。ガキはほっといて行こうぜ」  いやいや三人で遊ぼうってユウタ。海来たんだから泳ごう? てか腕掴むな引っ張るなって。 「ちょっとー、なに考えてるのさユウター! 女なんか構わないでいいって、ねサクヤ?」 「だからガキは黙ってろつってんだろ。ホラ行こうぜ」  ちょっとまておまえら。  ていうか俺、もっとたくさん声かけたよね? みんな行くって言ってたよね? なんでおまえらだけなの?  ていうか9時に駅で待ち合わせなんじゃなかったの? だってユウタ6時半に来たよね? まだ寝てたっつの。 「親父の車借りれたから、待ちきれなくてなー」  だとしてもありえなくね? つうかワタルも一緒に来たし、意味不明だったつの。 「うん! 僕も待ちきれなくてさー」 「……チッ、勝手に車乗り込みやがって、なんでおまえまでいやがる」 「ホント危なかったよねーマジでサクヤんちの前で張ってて正解だよー」  はってたって? どゆこと? てかなんでそんな話になってんの!? みんなで行くんだったんじゃねーの? 「安心しろ。予定変更は伝えてある」 「うん! 一斉送信したよー。海水浴は中止って」  は? 中止してねーじゃん、なにやってんの? 「だって僕見ちゃったんだよねー女子連中がキャイキャイ水着選んでるトコ。もーそんなのサイアクって思ってさ-。ンでも誰かサクヤ誘いに来たらヤバイから見張ってたのー」 「まあソコは良くやった。そこだけは認めてやる」 「わーい褒められちゃったー」 「ぜってー俺にはできねーよ、そんな姑息なやり方、とてもじゃねーが真似できねーわ。そんけーはしねーけど良くやった」 「それって褒めてるー?」  褒めてないよね? ていうかどういう会話してんのおまえら? なに勝手なことしてくれちゃってんの? 「ガキは気にすんな。せっかく二人で海に来たんだ。楽しもうぜ」 「えー、二人じゃないよー僕もいるよー無視しないでよ-意地悪だなー」 「サクヤおっぱい星人だろ。ホラあの白い水着おっぱいボーンじゃね? 海に来たらヤらしいことしねーとだろ?」 「見るなー!! サクヤこっち! そんなの見たら目が腐るよーっ!! かき氷食べよーよ」  だから二人して腕引っ張るなってやめろって!  俺は! 泳ぎたいんだよっ!! 「もちろん泳ぐけどよ、どうせなら女と一緒の方が楽しいだろうがよ」 「だから女なんて混ぜなくてイイでしょー!」 「黙れガキ! 来ちまったモンしょーがねーからお前も混ぜてやるから黙ってついてこいっての」 「やだー! バカについてったってイイこと無いに決まってるもんー!!」 「誰がバカだっ! 姑息なガキは黙ってろつってんだろ!!」 「顔と身体だけで生きてるバカー! そっちが黙ってよー!」 「はあ? 無い色気無理して出そうとしてんじゃねーよガキ! 無駄に企みやがってウゼーんだよっ!」 「なーんだよー色気あるでしょー?」 「ねーよガキ! 引っ込んでろ!!」  いやちょっと静かにしようか。注目浴びてるっぽいしさ。 「あーまた同じコト言ってーボギャブラリーないよねーバカだからー」 「は? ふざけてんじゃねーぞ! ガキになにが分かるってんだよ黙れっつの!!」  ほんとちょっと落ち着いてくれるかな。  どんどん声デカくなってるよおまえら。 「見てよサクヤー髪の色抜いたのー。海に合うでしょー? 風になびいてイイ感じに髪型も決めてきたんだー、どうー?」 「アホが! 男の色気ってモンが分かってねーなガキは!」 「無駄に胸はだけて、それで男の色気ってー? アハハバカみたーい」 「そっちこそ貧弱なガタイ隠すんならキッチリ隠せっ! ハンパに隠してんのが姑息だってんだよ!!」  あーもー勝手にやってろっ!! 「あっおい」 「サクヤー行かないで-」  知るか! まったくもう……  ざばざば 「つうかおまえが余計なこと言うからサクヤ行っちまったじゃねーか!!」 「余計なのはユウタじゃんー! なんで女なんてー!!」 「だから! 女でやらしい気分盛り上がってからフラれたらモヤモヤ解消したくなるだろーが! そこで俺の出番だろーがよ!」 「バカじゃない!? フラれなかったら逆効果じゃん!!」 「そこは秘策があんだよっ! あいつホモだぜってひとことでサイテー!なんつって女が離れるだろーがっ!」 「あーっなるほどー!! バカのクセに考えてんじゃーん底浅いけどー! ハハハー」 「底浅いってなんだよっ!!」  おまえら……声デカ過ぎんだよ。めっちゃ聞こえてるつの。  つうか周りの注目浴びすぎだっつの。 「だってー! かき氷食べて海入ったらお腹の具合悪くなったりしてー、ホテルで休もうってなるかなーとか? そういうコト考えてないよねー! バカだから!」 「バカって言うなっ!! つうかなんで腹痛くなるって分かるんだよっ!!」 「そりゃあー……ごにょごにょごにょ……」 「……お……まえ……姑息だな姑息すぎる! が……そうか! その手なら!!」  なにこぶし握りしめてんだよユウタ。ていうかワタル、いったい俺になに食わせるつもりだったんだ。  俺なにげに貞操の危機なんじゃね?  冗談じゃねーよ。つうか隠す気あんのかあいつら。  あ、そこの彼女、ちょっとあっちで一緒に泳がない?  ん? あいつら? うん、大学のタメだけど。    ああうん、髪白い方は幼なじみでさ、赤い方はサークルが一緒で、なんか絡んでくるんだけどね。  うんそうね、最近流行(はやり)のBL的な趣味あるっぽいね。  気になる? タイプ違うけど確かに二人ともイケメンだよね。けど俺も負けてないでしょ?  あはは、サンキュ。  うん、イイのイイのほっといて。なにげにイタイ奴らだから。そうそう、見かけによらないよね?  イカ焼きとか奢るよ。シュースでもビールでも、もちろんカクテルでも。交通費浮いたからカネあるしね。  へえ、イタリアンの屋台なんてあるんだ? じゃあそっちに行こうか。  ん? 俺?  決まってるじゃん。もちろん君みたいな可愛い子が好みだよ。  うん、行こ行こ。

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