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枝分・6
自分でもわかるくらいに溢れ出るフェロモン。痛いくらいに主張する自身。きゅんと収縮して刺激を欲しがる秘孔。
こんなにも乱れてしまっているのは自分だけ。
「い、今…特効薬をお持ちします。医者も…」
涼ちゃんの声が困惑と驚きに満ちている。僕が部屋を出て行こうとする涼ちゃんの腕をそっと掴むと、振り返った涼ちゃんの顔は、いつかのように桜色に染まっていた。
「いかないで…抱いてよ、お願い…!」
それは、もはや懇願。
高校を卒業したら亮司さんと結婚する僕が、本当に好きな人に抱いてもらえる最初で最後のチャンスだと思った。
発情する僕を見てそんな風に頬を桜色に染めるなら、少しでもその気になってくれるなら、抱いて欲しかった。触れて欲しかった。思い出が欲しかった。初めては涼ちゃんにして欲しかった。
ますます頬を鮮やかな色にした涼ちゃんの唇に、我慢できずに触れようとしたその時。
涼ちゃんは、僕の腕を振り払った。
「大樹様…なりません。」
強い意志を秘めたその瞳に、僕は伸ばした手を引っ込めた。涼ちゃんは一言も喋らずに部屋を出て行った。
僕は、なんとも惨めな気持ちになった。
涼ちゃんがαだったら、この過剰なフェロモンで彼を誘えたのに。抱いてくれたかもしれないのに。
「…涼ちゃん…ッ!」
苦しいよ、涼ちゃん。
言葉にはしなかった本心。言葉にしたら、立ち上がれないような気がした。
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