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4.二人の宝物

〈四皿目以前 前アトリエブログ掲載小話・ガド主催でアゼルとシャルのお互いのことをどれだけ知っているか大会〉 「アゼルはくるみが好き」 「シャルは桃が好き」 「お? 大当たりだぜィ」  答えが書かれた用紙を眺めて、ガドは愉快げにふんふんと鼻歌を歌う。  魔王アゼルと男でありながらその妃シャル。  お互いの趣味趣向をどのくらい認知しているのか、と思いついたら即行動のガドがシャルに訊ねて、アゼルの執務室にやってきたのが事の始まりだ。  丁度休憩の時間を見計らってやってきた二人は、アゼルを巻き込んで突然クイズ大会をやろうと言い出した。  主にガドのみだが。  普段ならガドが遊ぼうと誘おうがくだらないと一蹴する魔王だが、愛する嫁が遊びに来た為、上機嫌でノッてきた。  ちなみにこの状態の彼は、腹心を始めとして幹部に〝残念魔王〟と呼ばれている。本人も知るところだ。  事前に答えシートを書いてもらい、ガドの質問に順に答えていくスタイルである。  ローテーブルを挟んで、ソファーに回答者二人、向かい側にガドの席順だ。  一問目の〝好きな食べ物〟は難なく正解だった。 「ンじゃあ二問目、嫌いな食べ物」 「茄子だな。焼いた茄子じゃなくて、煮込んだ茄子が特に嫌いだ」 「んなっ、ば、バレてっ……!? っこの俺に嫌いなもんはねぇぜ!」 「クックック、カッコつけんなよォ〜シャル正解ィ」 「今度食べさせてあげよう」  苦手なものがあるなんて格好悪くて隠していたアゼルは、実はバレバレだったことにショックを受けた。  なんでだ。愛するシャルと食事をする時は美味しく感じて食べていたのに。  慰めるようにシャルに頭を撫でられ復活したが、その心はほろ苦いものだ。  彼はいつだってお嫁さんに格好いいと思われていたい。 「ちなみに魔王、シャルの嫌いなもんはァ?」 「嫌いってほどのもんはねぇ。だが好きに食べさせたらコイツは偏食だ」 「んっ?」  今度はシャルが目をぱちくりとさせて、アゼルを見つめた。  嫌いなものはない。事実だ。  だが偏食がバレているとは思わなかった。残したり選んだりあまりしていない。  アゼルはニヤリと笑って隣に座るシャルに誇らしげな顔をした。 「ユリスに貰った金平糖、なくなるまで丸々一月そればっかり食べてただろ。お前の食事量が減ってるのに気が付かねぇ俺じゃねぇぜ。しかもそれで昼飯抜いてただろ」 「よく見てるな、すごい。ハマるとそれしか欲しくなくなるんだ」 「食事量把握されてんのお前、体調崩したらすぐわかって貰えンじゃねぇ? よかったなァ〜」  フフン、とドヤ顔をするアゼルを凄い凄いと見つめる二人。  ここで食事量を把握されるほど観察されている事へのツッコミはない。魔王城一の苦労人、ライゼンは外出中だ。 「それじゃ第三問、好きな色」 「それは──」

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