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3.本日のパロディは赤ずきんちゃんです。(☆)

〈八皿目以降 フォロワー様100人記念リクエスト作品・配役指定赤ずきんパロ〉  昔々あるところの、海辺の街に並ぶ民家のとある一軒。  そこには街一番の美少年ユリスが、父と兄の三人で仲良く穏やかに日々を暮らしていた。  そんなある日のことだ。 「ユリスよ、このパンと葡萄酒を体調を崩して寝込んでいるらしいシャルおばあさんに届けてくるのだ。いいね?」 「ええっ? 寝込んでんのっ? もうっシャルのやつ、仕方ないんだからっ」  いつもどおりの穏やかな笑みを浮かべてパンと葡萄酒が入ったバスケットを差し出す父、ワドラーからお見舞いに行くよう頼まれたユリスは、ツンと不服そうに澄ましながらバスケットを受け取った。  お使いの目的地は、よく遊びに行くシャルおばあさんの家だ。  ちなみにおばあさんと言うのは語感のあだ名で、本名はシャル・オバーサン。  老婆ではなく、彼は人間の成人男性である。  そんな仲のいいおばあさんのうちへのお見舞いを任されたユリス。  ツンと澄ましてみせるのはユリスの性分であって、決して嫌なわけではない。  父の話では薬売りのライゼンがおばあさんのうちを訪ねた時に、苦しげな声が聞こえたらしい。うちの中へ入ろうとすると慌てて断られたのだとか。  様子を見に行く役目をユリスが担ったのは、仲のいいユリスならば断られずに看病ができるのではという、ライゼンとワドラーの心配(こころくば)りだ。  それがわかっているので、ユリスはバスケットを抱えて早速森へ向かうことにした。  そんなユリスを呼び止める父の声。 「ユリス、待つのだ。今日は一人なのだから、この赤ずきんをかぶっていくといい。森には恐ろしい狼が出るからな、狼を狙っている猟師に間違って撃たれてはいけないだろう」 「お父さん……、今時頭巾はダサい」  ユリスは気遣いたっぷりの声に振り向き、父の手にある気遣いの矛先がずれた赤ずきんを見てわかりやすく嫌そうに顔をしかめた。  ワドラーは首を傾げるが、ユリスとしてはなぜこれを勧めてきたのか父のセンスが非常に理解し難い。  頭のみをすっぽり覆える頭巾は傍から見るとトマトの被り物のようで、街一番の美貌を誇るユリスにとってこれはいただけない。  頭頂部に収納時の拘束用なのかわからないが、謎の紐がついているのもヘタの様でなおよろしくないのだ。  どうして父親のファッションセンスというのはどこの世界でも(いにしえ)のイキイキファッションなのか。  ユリスは呆れ果てながら、ショートブーツのつま先で床板をカツンと強く蹴る。  不機嫌を顕にしているのだが、ワドラーはなんのその。  ユリスの頭に頭巾を被せてそれでは行ってらっしゃいと背中を押した。 「さぁ行くが良い。寄り道をしてはいけないぞ? 狼や森の動物たちはどうにかお前を惑わせ、森に引き留めようとしてくるだろう。甘言に乗らねば、いつもどおり無事にお見舞いに行けるはずだ。良いな?」 「うん、わかってるよ」  被せられた赤ずきんに不満を隠せないが、尊敬する父の言いつけには渋々頷く。強者が絶対、それこそがこのマカイ街の住人の性質だ。  赤ずきんユリスはバスケットを抱えて、晴れた空の下を森の奥の友人目指して歩いていった。

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