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第4話【了】

 自分の肉の中にアゼルの牙が入っているというのは、注射針に入られるより安心感がある。  痛みに対する耐性は強い方なので、牙が大きくなっていなければ毒がなくとも然程問題はない。 「ん、アゼル……もうちょっと強く……」 「は、んう、このぐらいか?」 「ふ、そう、あ……ッ、でも何度も同じとこ噛まれると、そこ流石に感度あがる」 「じゃあちょいずらして……ン、ん……」 「う……あ、あ」  ガブガブしすぎて痛くならないように同じところを噛んでくれるんだが、すると微かな毒が蓄積されるのであえて別の所を噛み直してもらった。  その痛みで体がビクッ、と跳ねてしまう。  気持ちいいんじゃなくてちょっと痛いだけだ。  横目で見てみると、アゼルは俺を見ないようにしていた。なんでだ。  器用なアゼルはすぐにコツを掴んで、俺をしばらく貪る。もっと噛んで、あと少し大丈夫、そう言って意味を持たない呻き声の合間に催促する俺。  そうして少しずつだがきっちり血が抜かれていく感覚に酔いしれていると、アゼルは目を逸しているのになにやら熱い視線を感じて顔を上げた。 「「……」」  勝負がついたのか、俺を見つめているのはテーブルから何とも言えない表情をしているユリスとリューオだった。  二人は胡乱げな眼差しでキョトンとする俺を突き刺し、黙っている。 「あ、んん……、あ、ぅ? どうした?」 「「どうしたはこっちのセリフだよ」」  何も言われないので俺が吸血をされつつすこし前のめりになったまま首を傾げると、二人が同時に同じことを言った。仲良しだな、いいことだ。  それにどうしたと言われても、ただ吸血して貰っているだけだぞ。  なにもやましいことはない。  二人の声を聞いて、もろこしスタイルで俺の腕に噛み付いていたアゼルが牙を引き抜き、顔を上げた。同じような何とも言えない表情をしている。 「人が犬耳モフる権利をかけた真剣勝負の最中になにサカってんだよふざけんな夜にしろよバカ野郎が」 「お前が恥しらずなのは知ってたけど、僕らのいるときにやらしいことしようなんて随分ど変態になったじゃないこの色情魔」 「? 誤解だ、やらしいことはしていない。ちょっと血を吸ってもらってただけだぞ」 「「なにいってんだ(の)それがやらしいんだろう(でしょう)がッ!」」  ガオウ! とふたり揃ってバカじゃないのってな目で叱られ、俺はパチパチ瞬きをしながらきょとんと閉口した。これは勘違いされているぞ。  なんてったって吸血行為はやらしくない。やらしいのはアゼルの毒にやられた後、二人で雪崩込むからだ。これ自体は普通のことに決まっている。  そういう経緯と結論をどうにか弁明するべく、俺は「アゼル」と隣に助けを求める。  だがアゼルは神妙な顔で頷いた。 「そうだよな、やっぱり吸血中のシャルは不健全だよな?」 「はあ? ったりめェだろ散々それきっかけでファイト一発かましてる癖に今更何言ってんだ? 不健全すぎるわ。声聞こえてまじかと思って振り向いたらあの顔だぞオイ」 「あぁ、不健全よりの不健全だっただろ? 俺は直視できなかったぜ……」 「それはそうですよ不健全極まりなかったです! 破廉恥斑ネズミちゃんでした!」 「だろ? 今回ばかりは俺の目がマトモだっただろ?」  どういうことだ。  雲行きが怪しくなってきたので弁明したい俺を置き去りに、なんだか納得し合っている三人。  俺は早くも塞がりかけている腕の傷口に舌を這わせて滲む血を舐め取り、なんだか納得いかない気持ちでこっそり抗議をしてみる。 「吸血は至って健全な捕食行為だぞ……?」 「「「不健全」」」  そうして満場一致で意見を覆されて、俺は毒は関係なく吸血行為はエロいのだと三方向から囲んで言い聞かせられた。  未だにほんのりと納得していないので、これに対抗できる意見を募集中である。  結

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