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第39話
ユリスが見立ててくれた、黒と青のグラデーションな水着。
それと人目に付かないようにする効果が付与されたフードがついた、グレーのパーカーを着ているアゼル。
一応は海スタイルなんだがな。
フードを深く被って顔バレしないようにしつつ、俺のパーカーにしがみつきふて寝して、動かない。
せっかくの輝く肉体美がしっかりガード。
それは俺も嬉しいけれど、わかめが生えそうなアゼルのテンションはどうしたものかと悩んでしまう。
フード越しに髪をなでながら、荷物番を勝手出ているので遊びに行かない俺は「アゼル」と声をかけてみた。
「遊んで来てもいいんだぞ。俺ははしゃぐタイプじゃないし、荷物はきちんと守るからな」
「嫌だ。なんで俺を追い払うんだよ、俺と一緒じゃ嫌なのか馬鹿野郎。別に俺が居たいところにいるだけだぜ。ふん。海なんかより、ここでいい」
「そうか? それなら良いんだが……これじゃいつもと変わらないな」
けれど俺のお誘いは淡々と拗ねた声で拒否される。
少し笑ってポン、と軽く頭になでていた手を置くと、僅かに擦りつかれた。子犬健在か。
アゼルがいいならいいが、俺と二人でいるのはいつもどおりだ。
海にまで来て日常をなぞるなんて、だから隠居した熟年夫夫とリューオに笑われるのだろうな。
そう思っていると、アゼルがしがみついていた俺のパーカーを緩く引いた。
「うん? どうした」
「いつもと変わらねぇのは、お前もだろうが。それは残酷だぞ、かなり駄目だぜ」
「俺が?」
キョトンとしてアゼルを見下ろす。
首を傾げるが、フードから覗くアゼルの口元は不満たっぷりのへの字口だ。
俺のなにが残酷なんだろう。
今日のランチはマルオが用意してくれた美味しいランチだし、デザートはフルーツアイスキャンデー。
氷魔法のかかった保冷機に入れてきた。
日焼け止めからサンオイルにタオルや昼寝用クッション等など、準備に抜かりはない。
落ち度はないと思うんだが……。
全く合点の行かない様子を察したアゼルがブスくれて俺のパーカーの裾を引くので、体勢が崩れて肘をつき、横向きに寝そべる形になった。
距離が近くなるとアゼルのやけに整った異国人のような面立ちが目に入り、口元が勝手に緩んだ。
アゼルは赤くなっている。日焼けしたのか。
「それで、どうしてそんなに不満そうなんだ?」
「あぁん? 海に来たのに、お前は上着を着ているじゃねぇか。海スタイルじゃねえぞ、残酷スタイルだぜ。生足魅惑のマーメイドはどうした」
「どこからツッコめばイイのかわからないがお前はいつの間にレボリューションの歌を覚えたんだ」
残酷スタイルとは如何に。
お前だって同じだぞ? そしてティーでエムな海歌の歌詞の出処はどこだアゼル。
それを尋ねると、リューオに海について教えて貰った時に歌って聞かせられたらしい。リューオ、チョイスが渋いな。
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